世界一売れているブレンデッド・ウイスキー、ジョニー・ウォーカーを擁し、スコッチシングルモルトの蒸溜所をもっとも多く所有するのが、業界最大手のディアジオ社だ。


ディアジオはスタンダードの加水とは別に、カスクストレングスの限定品を毎年リリースしている。

年により選ばれる蒸溜所や熟成年、原酒が熟成された樽が違い、その蒸溜所のスタンダードとは違う面が味わえるため、一ウイスキーファンとして毎年のリリースを楽しみにしている。


近年はポートエレンやブローラのリリースがなくなり熟成の短いリリースが増えた印象だが、2022年はよりその傾向が顕著だったように思う。

リリースされるのがいつも秋頃で、Barが先行して海外から輸入するのがその時期の風物詩となっている。

かくいう私も去年の秋にリリースがあったものは一通り飲んだ。


スピリティなものが多い印象だったが、飲んだものの中で個人的に一番いいと思ったボトルを一種類だけ買った。

それがこのタリスカー11年だ。


スカイ島にあるタリスカーはアイランズに分類され、ピーテッドタイプのウイスキーをつくる1830年創業の名蒸溜所だ。

ディアジオの所有するシングルモルトの蒸溜所で、一番売り上げ本数が多かったはずだが今はどうなのだろうか。

その莫大な生産量から選りすぐられたリミテッドはハズレが少なく、毎年のように選ばれてリリースされるが常に注目されているように思う。


2022年のリミテッドでリリースされたこの11年ものも、スピリティな印象が多かった同リリースにあって、しっかりと仕上がった良質なウイスキーだった。

Barではフルショットで飲んだがテイスティングをつけていたわけではないので、自宅で開栓し改めてテイスティングしてみた。



【テイスティング】

トップにはビートスモーク、バーボン樽のバニラ、ほんのりと焼いた樽の鉛筆の芯感があり、少し砂糖をまぶしたような甘味のドライアプリコット。

ピートの苦味、挽いた白胡椒に黒胡椒系の皮のエグみをたしたスパイス感、埃っぽいニュアンス、潮風をたっぷり浴びた岩のミネラル。

ぬるっとした昆布水、オレンジ様の柑橘、レモンキャラメル、ハーブソルト、余韻は短め。


汐っぽい海の酒で、バーボン感は強弱がうまくついついてファースト・フィル一辺倒ではない印象。

トップから甘味のあるフルーティーさを感じるし、ドライというよりはしっとりしている。

短めの熟成ながら仕上がった印象は飲んだときと変わらず、スピリティで鋭いほかの蒸溜所とは違った事を裏付けるテイスティングとなった。

この仕上がりの良さはピートが効いているタイプなのも幸いしているのだろう。


資料によるとファーストフィルとセカンドフィルのバーボン樽やワインカスクも使っているようだが、ここまで甘さがのるのはソーテルヌなどのデザートワインの樽でも使ったのだろうか。

といっても嫌みがなく麦芽系の甘さに少しだけ砂糖をたした感じで、この味のオフィシャルカスクストレングスの限定品が£90強で買えるのは今どき素晴らしいと思う。


2018年リリースの8年と並べて飲んでも、方向性は少し違ってよりフルーティーで甘さやボリューム感があると感じる。

だが、どちらもいいタリスカーである事は間違い違ないし、あと7年にせまった蒸溜所の200周年に期待を寄せたくなる。

海の酒だが少し女性的な優しさや暖かさのある、そんなタリスカーだ。

【Verygood!】