インナーヘブリディーズ諸島、『ウイスキーの聖地』ともいわれるアイラ島から、アイラ海峡を挟んで位置するジュラ島。

アイラ島とほぼ同じ面積の島にはアカシカが多く生息しているそうで、ジュラの語源も『鹿』を意味すると言われています。

また、島にはパップス・オブ・ジュラという3つの急勾配な円錐状の山々が存在し島のシンボルとなっていて、このボトルのラベルにも描かれています。

そのジュラ島の集落クレイグハウスにある、島唯一のウイスキー蒸溜所がアイル・オブ・ジュラ蒸溜所。

もともとジュラ島では16世紀からウイスキーが密造されていた記録があるそうですが、1810年に『スモールアイル』という名前の蒸溜所が創設され、その後アイル・オブ・ジュラに改名されて現在に至ります。

一度1901年に取り壊されているらしく、現在の蒸溜所は1963年に建てられたものだそうで、チャールズ・マッキンレー社から1985年にインバーゴードンが買収し、ホワイト&マッカイの傘下に入りました。

ホワイト&マッカイといえば、天才ブレンダーのリチャード・パターソンが在籍していますが、ノンピーテッドタイプのクリーンなウイスキーが身上のジュラにおいて、初のピーテッドタイプ『スーパースティション』を世に出すなど新機軸を打ち出しました。

パターソン氏は以前、ウィスク・イーさんがジュラの日本の正規代理店だった頃には、ウイスキーマガジンライブ向けにカスクをセレクトしており、私もそのボトルが今も自宅にあったりします。

個人的には好きな蒸溜所のひとつで、  1966ヴィンテージのブラックジュラやオフィシャルの1974や30年などが印象に残っていますが、やはりジュラといえばこれでしょ!というのがこのボトル。

チャールズ・マッキンレー時代の8年熟成のオフィシャル品で、ジュラ8(ジュラッパチ)という愛称で親しまれている1970年代流通のオールドボトルです。

同じ時期にいろんな表記のボトルがありますが、これは8年ピュアモルトの70(イングリッシュ)プルーフ、26  2/3液体オンス(757ml)表記のプラスクリューキャップ。

海外のオークションで最近14,800円程で落札し開けたものですが、海外ではあまり人気がないのか今のウイスキー相場を考えたら安く手に入ります。

島系のフルーティーさがあり、どことなく70年代頭のボウモアを彷彿させて、かつラベルもいいため、個人的には気に入っているボトルです。

ボトリングから40年ほど経っている古い加水ボトルですが、あまりヘタっているものに当たった事がありません。
意外な事に今まで記録を残していませんでしたので、記載しようと思います。

【テイスティング】
ナチュラルなスモーク、ブリニーな潮っ気、淡くドライマンゴーのようなトロピカルフルーツ、サラッとした蜂蜜、べっ甲飴、バニラクリー厶。
8年とは思えないオークのニュアンスはあるが、エグみはなく、スパイシーさはドライジンジャーのようで微かにグラッシー。
アフターはドライで、乾燥した干草や麦、葡萄の梗。
少しワクシーで樹液のようなニュアンスがある。
加水ボトルだがフルーティーな余韻が伸びやかに長く続く。

60年代の一部のボウモアのように露骨ではないが、淡くトロピカルがあるアイランドモルト(期待しすぎると肩透かしを喰らいます)。

80年代の蒸溜になるとジュラの特徴とも言える油粘土っぽさが出てくるが、8年はそれほど感じる事がなくこのボトルでも感じなかった。

高額な値段で買う必要は無いが、上手く買えば今でも15,000円弱で落札でき、自宅ならショットで650円程度で楽しむことが出来る。

40%加水とはいえウイスキーの黄金時代の末期である60年代終わりから70年代頭に作られたウイスキーだけあり、物足りなさはない。

最近、京都ファインワインアンドスピリッツさんからジュラがリリースされているため、それと比較するのも楽しいかもしれない。

グレンドロナックのグリーンダンピー8年や、スプリングバンクの8年ペアシェイプなどと並んで、8年熟成スタンダードの銘ボトルだと思います。

ニューリリースと並行してこういう古いボトルも飲むと、その蒸溜所の変遷が分かり興味深く、その蒸溜所が更に好きになる、そう思えるボトルです。


【Verygood!!】