放射線育種米「あきたこまちR」をご存知ですか?

(これは別の問題ですが...ついでに)

転載元:「I Love あきたこまち」さんより転載させていただきました。

【まとめ:「あきたこまちR」によって何がどうかわるか?】

*講演会の映像についてはコメント欄にリンク貼りますのでぜひたくさんの人にみていただきたいです。カットとなってしまった質疑部分のまとめも貼ります。

《以下、印鑰さんのまとめ》
秋田県、いや日本を代表するお米、「あきたこまち」を放射線育種後代交配種「あきたこまちR」に秋田県が2025年から全量転換方針決定、という事態を受けて、秋田県に7月28日から8月2日まで行ってきました。
3つの学習会を大仙市、湯沢市、潟上市で行いました。どんな問題か、要点を書きます。

重イオンビームという放射線をあてて、遺伝子の1塩基を破壊した低カドミウム米を今後の日本の主要な品種にしていこうという方針を農水省が2018年に決定した。
農水省はすべてのお米を汚染されていない地域含めて、100%放射線育種米に転換させる方針を立て、それをもっとも忠実に実行しようとしているのが秋田県。秋田県は2025年から放射線育種「コシヒカリ環1号」の後代交配種「あきたこまちR」に全量転換させる計画。このままでは、従来の「あきたこまち」は秋田県では2024年で終わりになってしまう。
● なぜ、わずかな汚染地対策のためにすべての地域で汚染対策米を栽培させるかというと、そうしないと「風評被害になるから」という理屈である。
● 富国強兵政策の下、政府は財閥系企業に鉱山開発をやらせたが、満足な環境対策もなく、鉱山周辺にはカドミウム汚染が残る地域がまだ存在する。
● 汚染企業や国の責任は明らかだが、企業はろくに責任を問われることなく、国も汚染米の買収事業から撤退、地方自治体にその負担がかかっている。
カドミウムは自然に存在する元素だが、人体に入ると腎臓に影響を与え、カルシウム分が体外に出され、骨や神経に影響が出る。イタイイタイ病の原因ともなる。特に女性に深刻な影響が及ぶ可能性がある。主に鉱山活動によって地中のカドミウムが大量に地上に出て、汚染につながった。
● 現在、カドミウム汚染地域は限られていて、3%に満たないと考えられる。しっかり国が責任を取り、汚染調査をして、被害者の救済、そして、汚染地域をしっかり支え、今後汚染させない政策があれば、この問題は解決可能だ。今回の隠れた主役は実はヒ素であるが、この汚染についても同様のことが言える。
●「風評被害」ではなく、被害対策をしっかりやっていないことこそが最大の問題点であり、それがないために、実際には被害にあっても声をあげられていない犠牲者がまだいる可能性もある。鎌田慧『隠された公害―イタイイタイ病を追って』参照
● 重要なのはカドミウム汚染地をなくすこと。しかし、その問題よりも米に入らなければいい、という問題だけに矮小化にされようとしていることに懸念せざるをえない。低カドミウム米の栽培ではカドミウム汚染はそのまま残り、さらに下水汚泥肥料などによって、カドミウム汚染が高まる可能性もある
● この問題は秋田県の問題に留まらない。農水省は全国でやれと号令を出し、すでに全国での200品種を超える品種の放射線育種版が作られつつある。つまり、この問題は日本全体に及ぶ。
● 政府は放射線育種は問題ないと言っているが、これまで世界で行われてきたガンマ線照射による放射線育種は世界ではほぼ終わっていて、施設は閉鎖されている。やっているのは日本くらい(中国の動向は不明)。そして今回使われているのは従来のガンマ線ではなく、はるかに強いエネルギーを集中的にあてる重イオンビームである。その安全性を裏付けるデータや実験は存在していない。
● 確かにかなり前から「原子力の平和利用」という名目のもとで、放射線をあてて突然変異させた品種は作られて、市場に出回ってきた。しかし、その品種ばかり100%になった事例はなく、毎日そればかり食べてきた人もいない。もし、放射線育種米だけしかなくなって、それを毎日食べ続けるということを、10年後、20年後、続けたらどんな影響が起きるか、誰も予想できない。
●放射線育種によって作られた「コシヒカリ環1号」やその後代交配種である「あきたこまちR」はOsNramp5という遺伝子が破壊されたことによってカドミウムを吸収しないと同時に生物の成長にとって欠かせないマンガンを吸収しにくくなっている。そのためこの品種はごま葉枯病になりやすい(これは農水省も確認済み)。マンガンが豊富でない水田では余計にマンガンを足してやらなければならなくなる。「あきたこまちR」でなければ不要な対策を多くの農家が負担しなければならなくなる。
●遺伝子が1つ壊れていて、人の手を使ってマンガンを足してやらないと育たない生命力の弱い品種がこの気候変動が激化する今後の気候に耐えられるという保障はない。ごま葉枯病以外の病気も出てくる可能性がある。その品種を100%にするというのは食料保障の観点からもありえない。
● 「遺伝子の1塩基しか壊れていないので安全」というが、1塩基を壊すことでその遺伝子はそれまでとは異なるタンパク質を作る(フレームシフト)。長期的に食べた時に健康にどんな影響をもたらすか、実験は行われていない。安全は確かめられていない。
●「あきたこまちR」は自家採種禁止。他の秋田県品種もすべて放射線育種の後代交配種とする計画であるため、秋田県ではほとんどのお米が自家採種禁止となる。県から提供可能なのは遺伝子特許が取られた米だけになり、その中での選択の余地はなくなる。
● 放射線育種米を作るのは日本くらいだから、世界の消費者はそんなお米は受け入れないだろう。農水省は放射線育種米も有機認証OKだと言っているが、EUでは種苗に放射線をかけることは有機としては認められない。
 そもそも人びとは安心するために有機を買っているのだから、日本の有機がそうなってしまえば有機に対する信用はがた落ちになるだけ。また世界の消費者の理解も得られないので、日本米は海外市場も失うことになる。すべての有機農業関係者にとっての脅威となる。
● 放射線育種は効率は「ゲノム編集」に劣り、この放射線育種米がいつの日か知らぬ間に「ゲノム編集」に代わってしまうというのは十分ありうるシナリオだ。
● この一連の決定は農家も消費者もまったく関わることなく、農水省ー秋田県の独断で行われた。一部の農産物検査機関や流通企業の同意のみが求められ、農家や消費者は蚊帳の外である。
● 秋田県だけで動けば、農水省のロジックでいえば秋田県産米への「風評被害」必至となる。それを考えれば今回の秋田県の動きは拙速が過ぎる。切り替えの延期は不可欠だろう。
● 低カドミウム対策米は放射線を使わなくても、在来種を活用することは可能。
以上 
 結局、長くなってしまいましたが、まだまだ先はあります。どうすればいいのか、など。でもそれはまたの機会にします。
 「あきたこまち」は日本を代表する品種となり、全国の人に愛されており、昨年のデータでは31府県での栽培が確認できます。個人的にも秋田産の「あきたこまち」を毎日食べています。従来の「あきたこまち」を守ろうという大きな動きを作り出し、この全量転換という愚策を止めたいと思います。
 この問題は対岸の火事ではすみません。秋田がこの動きを止めることは日本全国にとって大きな朗報となるでしょう。全国から注目を、どうぞよろしくお願いいたします。
 今後も学習会など、必要なことをやっていく予定です。
(ここまで)
転載元:「I Love あきたこまち」さんより転載させていただきました。
https://www.facebook.com/ILoveAkitakomachi?locale=kk_KZ

 
え、全量放射線育種米に? 【あきたこまちR って何?】 
2023.8.1  印鑰智哉 × 谷口吉光 前半
鶴岡持続可能社会研究所TSSI