先日、アルツハイマー病の治療薬に対する厚労省への申請がなされたことが報道されました。
アルツハイマー認知症はアミロイドβというタンパク質が脳内に大量に蓄積することで引き起こされると考えられ、その原因であるアミロイドβを標的とする薬ができたということのようでした。
アルツハイマーだけでなく、神経変性疾患の多くが何らかの特殊なタンパク質の大量蓄積による原因が多いと考えられ、パーキンソン病(レビー小体認知症、多系統萎縮症)を引き起こす特殊タンパク質はαシヌクレインといわれています。
素人的に単純化していうと
・アルツハイマー病⇒アミロイドβの大量蓄積
・パーキンソン病⇒αシヌクレインの大量蓄積
ということになるかと思います。
パーキンソン病の原因物質ではないかとされたαシヌクレインは20年近く前より知られていて、アルツハイマー病のアミロイドβよりも研究が進んでいたとされます。
ゆえにパーキンソン病の根本治療薬は完成間際だといわれていたのに、アルツハイマー病の治療薬開発に追い抜かれた感じです。
難しい薬のメカニズムはさておき、要するにパーキンソン病の原因物質であるαシヌクレインをドーパミンを出す脳内の神経細胞(黒質線条体)から排出すればいいということになります。
▼ドーパミン神経細胞から溜まったαシヌクレインを排出する薬の実験
しかし、ここにきてパーキンソン治療薬の開発が難航しています。
治験が思うように進んでいないといいます。
後発だったアルツハイマー病の治療薬の方が治験成功となり、「あと一歩」と言われ続けたパーキンソン治療薬が足踏みしています。
一説にパーキンソン病患者数よりもアルツハイマー病患者の方が多くて、深刻なため儲かるからという巷説がまことしとやかにささやかれています。
今のパーキンソン病はLドーパなどの対処的薬物治療で、寝たきり状態になることを20年程度遅らせることは可能です。
発症年齢が65歳以上なら問題ないことになりますが、私の妻のように50歳前にしてパーキンソン病となった患者とその家族にとっては根本治療薬の開発は不可欠です。
臨床医にとっては今のパーキンソン病の治療薬は厚労省の申請もされていない段階であるため、治療薬について妻の主治医に尋ねると
「現段階ではあまり期待しない方がいいと思います。」
という回答。
10年先はわからないが、4~5年先でパーキンソン治療薬を期待することは全くできないとハッキリ言われました。
開発している治療薬は進んでしまったパーキンソン病には効果が期待できないものが多いということで、早めの開発を期待したいです。
最近、妻が「寝たきりになったら、生きていたくない」と口走ることがあります。
「先生も言っていたように今はキチンと薬を飲めば、あと20年は大丈夫だから」
と言おうとして、ハッとします。
本当に治療薬は何とかしてほしいです。