自分が心臓手術を受けるにあたり、今年亡くなった母の心臓病のことを思い出した。

 

母は高血圧から来る血管の石灰化により、弁膜症の中では深刻な大動脈弁狭窄症を起こし、心不全に悩まされたことは記憶に新しい。

 

 

母の場合、大動脈弁狭窄症から来た心不全の重篤な症状は「肺水腫」だった。

 

ある日の深夜、実家の父から電話があり、母が息ができなくて苦しい、ひどい喘息のようだが救急搬送するべきかどうかというものだった。

 

母の様子を見に行くと、呼吸をしているのに息ができていない感じだった。同時にコンコンと乾いた咳を頻繁にしていて顔色が真っ青だった。

 

ひどい喘息発作だと思った私は母を救急搬送すると、医師から肺水腫だと診断された。

 

肺水腫とは肺(肺胞)に水が溜まってガス交換ができなくなるもので、息をしているのに溺れているような感覚になる非常につらい症状の疾患である。

 

母の場合、肺に問題があるのではなく、大動脈弁狭窄症により心臓のポンプ機能が低下したために起きた心臓由来の肺水腫だった。

 

母の肺水腫は利尿剤を投与して肺に溜まった水を対外に排出することで徐々に改善していったが、原因である心臓の弁膜症(大動脈弁狭窄症)を治療しない限り、いつ再発してもおかしくない状況だった。

 

 

当時、母の年齢は83歳。

高齢な上に血管という血管は石灰化しており、リスクが高すぎて心臓手術は不可。

このまま心不全が波状攻撃のように襲来して、肺水腫をはじめとする諸症状により苦しみ悶えて死を待つしかないのかと悲嘆にくれた。

 

 

幸い、母はTAVIというカテーテルを使った生体弁の置換術を名医に行ってもらい、

何とか成功することかできた。(血管の石灰化が酷く、TAVIの名医でないと困難だった)

 

TAVIで生体弁置換を行った母はこれまでのような心不全の症状に悩まされることは皆無となった。

 

心不全はよく耳にする言葉だが、その諸症状はしんどいものが多いという。

 

母の心臓の主治医の言葉に

 

「心臓は落ちてしまった機能を元に戻すことはできません。不可逆的です。」

「我慢せず、元気な心臓のうちに治療することが肝要です。」

 

というのがあった。

 

さすがに当時は自分がまさか心臓の弁膜症(僧帽弁閉鎖不全症)になるとは思ってもいなかったが、母の心不全を目の当たりにしていなかったら、手術をする決心はつかなかったかも知れない。

 

肺水腫をはじめとして、心不全は苦しい症状が多いようだ。