僧帽弁閉鎖不全症なる病で心臓手術が必要と言われた私。

全く予期していなかった事態に狼狽するばかりで、その様子はまるで幼子と変わらなかったように思う。

 

45歳の時に予備軍から正式に糖尿病になったと診断されたときは少し落ち込んだが、狼狽したり混乱したりすることはなかった。やはり、心臓を手術するというのはリスクが高く且つ命懸けの要素を持つだけに冷静には受け止められない。

何とか気持ちを落ち着かせて、妻と私の父親に連絡をした。

やはり二人とも驚いた様子だったが、そのせいか私はようやく事態を冷静に見つめようという気持ちになった。

 

家に帰ると医学書を広げ、ネットで僧帽弁閉鎖不全症なる用語でグクって調べてみた。

すると余命は数年とか、手術代は150万円とか、衝撃的な言葉が躍っているではないか。

「そ、そんなヤバイ病気なのか・・・手術代も高額で、どうしよう・・・・」

よく見ると検索エンジンでアップされるのはペットである犬の僧帽弁閉鎖不全で、人間のものではなかった。

「なんだこりゃ! 紛らわしい!」

そこで、人間、僧帽弁閉鎖不全症、手術といった複数のキーワードでググるとヒトの僧帽弁閉鎖不全症にヒットした。

 

心臓手術は基本的に開胸手術が基本。

そのため胸骨や肋骨を切断しなければならず、退院復帰するのに数カ月を要するとある。

何より手術後が辛いとあるのを見て絶望的になった。

 

中には開胸手術をしないで胸腔鏡的手術もあるが、その分手術の難易度は格段にハネ上がりトップクラスのゴッドハンド外科医でないと不可能。

そんなゴッドハンド心臓外科医にコネなどなく、そんじょそこらの心臓外科にやってもらうしかないと諦め、真っ暗な気持ちにならざるを得なかった。

 

それより何より、手術など一回もしたことのない私。

麻酔は大丈夫なのか?

心臓手術って心臓を一時的に止めて、人工心肺を回してやるというもの。人工心肺から離脱できなければ、すなわち死。

怖い! 怖い! 心臓手術で死ぬか、心臓手術しないで死ぬか、等々のことが浮かんでは消えて頭がグルグル状態。

 

50も過ぎたおっさんが情けないことにビビりまくっていました。