妄想
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冒険科学妄想小説 マンダラーズロード 第二十章

閑静な中野区にその被害者である押田恭子の住宅はあった。

進藤と坂上と志村の乗った車が到着した。
できるだけ被害者を刺激するなということでしたよね?坂上さん」
進藤が確認するように言った。
「俺が興奮するとでも思ったのか?これでも被害者と呼ばれる人間に会うときには
 いつでも冷静に。が俺の信条だ。」

その住宅は普通の二階建ての家で赤い屋根だった。この大きさからすると
それなりの所得があるごく普通の家族が住んでるんだろうなと進藤は思った。
それが事件の被害者であるということを除いて。

インタフォンを押すと声が聞こえてきた。
「はい。」中年の女性の声だ。
坂上と進藤はインタフォンに顔を寄せた。志村は後ろのほうで周りをきょろきょろ見ている。
「すいません。警察のものですがこちら押田恭子さんの自宅ですよね?」
しばしの沈黙の後「そうですが・・・。警察の方がなんでしょう?」
「ある事件のことでお宅の恭子さんにお話を伺いたいのですが?恭子さんのお母さんですよね?」
「・・・・はい。私は幸恵と申します。あの・・・む、娘が何かしたのでしょうか?」
「いえ恭子さんが何かしたのではないんです。会わせていただけますでしょうか?」
本当だ。今日の坂上さんは冷静だなと進藤は思った。
「少々お持ちください」

しばらくして玄関のドアが開くと中年の45歳くらいの女性が少々やつれた顔で出てきた。
「恭子の母です。どうぞおあがりください」

坂上と遠藤と志村は押田家に入った。

押田家の中はごく普通の家であった。茶の間のソファに案内され座って待つ三人に恭子の母の幸恵がお茶を運んできた。
「いや余計な気はつかわんでください。」坂上は無理やりな笑顔を作った。
「突然お邪魔して申し訳ありませんね。」
「あの・・・うちの恭子に何の用なんですか?」
「いえ・・ある事件というのはお嬢さんが入っていたという{レジェンド会}のことなんですが・・・。」
そう坂上が告げると幸恵の顔が途端に青くなっていった。
「あのその件ならもうあの子は・・・。関係ないはずです」
坂上は一呼吸おきながら答えた。
「もちろんそうなのですが。お嬢さんはあの会に入っていて就職して脱会していますよね?」
「・・・はい」
「今も働いてらっしゃるんでしょうか?」
「・・いえ」
「というと?」
「去年辞めて今は・・・あの働いておりません。」
坂上は小さくうなった。
進藤はメモを書きながら追随した。
「ということは今は無職でご自宅にいるということですか?」
「・・はい。二階にいます」
志村が天井を仰いだ。
「さしつかえなければその就職先を教えていただけませんかね?」
幸恵は一瞬嫌な顔をして答えた。
「株式会社マンダラーズです。」

坂上が「どっかで聞いた名前だな」と答えた。
「あれですよ!中野に本社があるオタク会社ですよ!」
進藤が坂上に突っ込みを入れた。
「あのそれでお嬢さんは二階にいらっしゃるんですよね?会わせていただけますか?」
幸恵は下に視線を落としながら答えた。
「あの・・・あの子は本当に良い子なんです。あのできればほおって置いてくれませんか?」
坂上は厳しい顔で答えた。
「お嬢さんは被害者だというのが我々の認識です。人が死んでいるのですよ。
どうかご理解いただきたい」
幸恵は驚いていた。


押田家の二階。小さい階段をあがって突き当たりの部屋に幸恵は案内した。
「いつも閉じこもってますから無理かも知れませんよ」
幸恵は言った。
ドアに小さなプレートがかかっている「KYOUKO」と書いてある。
「恭子ちゃん?聞こえる?あのね」
ドアをノックする幸恵。
「あのね。あの、今警察の方がみえてあなたに会いたいそうなんだけど・・。」
幸恵は申し訳なさそうに三人にお辞儀をくりかえした。
しばらくの沈黙の後、中から声が聞こえてきた。
「警察? 警察が何の用?」
坂上と遠藤は顔を見合わせた。
「あのね。恭子ちゃん。レジェンド会について聞きたいんですって。」
また沈黙の後中から声がする。
「帰ってもらって!」
幸恵は首を振りながら三人を見つめた。
「やっぱり無理で・・・」
そこで遠藤は叫んだ。
「君はマンダラーズで働いていたんだろう?そこで何かあったんだね?」
坂上と幸恵は驚いた。
「ちょっとでいいんだ我々警察と話をしてみないか?君の事は問題ない。」

またしばらくの沈黙。


「ドアなら開いてるわ。聞きたければ入れば?ただ・・・。」
「ただ・・なんだね?」

「お母さんは入れないで」

坂上は幸恵に目で確認をした。
「わ、わかりました・・。私は下に・・。」
幸恵は階段を下りていいった。
「遠藤さっきのは何だ?マンダラーズが何かあるのか?」と坂上が小さく聞いた。
「レジェンド会よりも怪しいと思ったんですよ個人的に。」
「何がだ?俺にはさっぱりだぞ」
「まあ話を彼女に聞いてみましょうよ」
といきなり志村が坂上と遠藤の間を突っ込んでドアを開けた。
「ええっ?」驚く二人。
志村が部屋の中に入っていく。
坂上と遠藤も続いた。

部屋の中は暗く電気も付いていなかった。
一台のパソコンが付いていてパソコン画面がぼーっと明るく部屋の中を照らしていた。
その前に少女が座っていた。ジャージ姿の少女だった。
顔にマスクを付けている。
少女は部屋に入ってきた三人には目もくれずにパソコン画面を見つめてながらタイピングしていた。


「マンダラーズのことが聞きたいの?」
少女が答える。

遠藤がにっこりとしながら少女に近寄る。
「おじさんたちと話できるよね?」

「さっき怒鳴ったのはあなた?」
「そうだよ僕は遠藤刑事。こちらは坂上刑事と志村捜査官」
「あっそ」
あいかわらず少女はパソコンに目を向けたままだ。
「自己紹介なんていらないでしょ?何が聞きたいの?それと・・・・」
そこで少女はパソコンのタイピングをやめて三人のほうを向いた。


「何を解決してくれるっていうの?」


「君は無職で働かない子供を持つ親たちから金をもらい・・・・・」
遠藤がメモを見ながら話し始めた。
「就職させるというレジェンド会に入会していたわけだよね?」

マスクをしたジャージ姿の恭子は目だけしか見えなかった。
「だったらなんだっていうの?」
「そのレジェンド会でマンダラーズ株式会社のことを知った」
「マンダラーズなんて有名だよ。アニメオタクの中じゃ。」
恭子は答えた。
「マンダラーズに入れば好きなアニメで仕事ができるんだからね」
「君はアニメオタクってことかな?」
「あんたらから言えばそういうことでしょ?」
恭子はまたパソコンに目を向けた。
志村と坂上は黙って成り行きを見ていた。
遠藤がさらに続けた。
「そのマンダラーズに入ると何か怪しい仕事とか強制的な仕事とかなかったのかな?恭子ちゃん。」
しばし沈黙。
「怪しい仕事って何?」
遠藤は坂上をちらりと見る。坂上は意味がわからないという顔つきだ。
「例えば・・人を殺すとか?」
遠藤は静かに尋ねた。
「君は湯川学という男性の名前は知らないかい?」
坂上は驚く。
「ちょっとまて遠藤。じゃぁ殺人はマンダラーズがやったっていうのか??」
「まあまあここは彼女に聞いてみましょうよ。ね?恭子ちゃん」
恭子はパソコンで何か打ち続けている。
「何が言いたいわけ?警察が何か私を助けてくれるとでもいうの?」
「というこは君はマンダラーズに入社して何か困ってるわけだね?
そして君はマンダラーズを辞めた。それはなぜか?」
「あなたら警察に言っても無駄でしょ?それなら帰ってくれない・・えっ・・・・・」
恭子は目を見張った。
遠藤と坂上も恭子の目を見張る。恭子の目の先を追いかけると
遠藤と坂上の後ろで志村が銀色のA4サイズのボードを胸に掲げていた。
ボードの中に文字が浮かびあがっていた。
{幻聴兵器}
恭子は叫んだ「なんでそれがわかったの??」
志村は無表情なままだ。
遠藤は声を強めた。
「マンダラーズで幻聴兵器を使って殺人をしているということ君は知っているんだね?
そうだろ?」
「わ 私は何も知らない!そんなこと!」
「君はその幻聴に今も悩まされているんじゃないかな?」
「うるさい!」
恭子はパソコンの置いてある机を叩いた。
「何があったのか警察に話してくれないかな?」
「お前らに何がわかる!!幻聴が聞こえるとでも言えばいいの?
どうせお前らは「頭がいかれてるね。病院に行けで終わりでしょ?」
遠藤は坂上を見た。坂上は咳払いをした。
「まあまあ恭子さん落ち着いて。これは非常に重要な問題なんだ。
君の安全は保障する。そのためには君の話が聞きたいのはわかるかい?」
恭子は涙ぐんでいた。
「湯川学という男性が最近殺されたんだよ。警察の我々はその・・幻聴兵器で殺されたと睨んでいる。
しかし幻聴で殺されても証拠はない。これじゃ警察もお手上げだ。ただね。
我々も馬鹿じゃない。君を苦しめている幻聴兵器を我々は必ず見つけ出し
最低なやつらを捕まえたいと思っているんだよ。この遠藤も・・。そして
この女性の志村捜査官もそう思っている。」
「僕たちを信じてください。恭子ちゃん。」
遠藤は恭子を見つめた。
恭子は黙ってパソコンに向かうと何やらファイルを開き始めた。
フォルダが開かれる。
動画ファイルが開かれ恭子は再生ボタンを押した。
恭子はパソコンから離れてベットに座り込んだ。
動画がパソコンの画面いっぱいに再生された。
「これがやつらが気に食わないらしい。私に消せと脅迫してきた。」
「この動画はなんだ。」と坂上。
「ここれは・・・」
動画は祭りのような群集の映像だった。
中野駅前で集団がアニメのコスプレで踊りまくっている。
「坂上さん!これはマンダラーズのコスプレ祭りの映像ですよ!
この間中野駅前の喫茶店で見たやつです!」
「ああそういや・・・こんな祭りがあったな。」
映像が祭りの集団の先頭に切り替わった。
赤白チェックのシャツにジーンズの男が大写しになる。
「こいつ無表情で踊ってますね。なんでこいつだけコスプレしてないんでしょう?」

「そいつが湯川学を倒したとかほざいていた男・・・。」
恭子は答えた。
「なんだって????」遠藤と坂上は声を揃えて叫んだ。


「通称・・。関根。本名は知らないマンダラーズではリーダーと呼ばれていた・・。」

「そういえば関根勤に似てますよね?坂上さん。」
「だから関根か?」

「私が知ってるのはそれだけ・・・。そんなことを言ったところで・・。

恭子は泣いていた。
「この幻聴を止められるわけないでしょ!!!!警察なんかに!!」
恭子は枕を遠藤に投げつけた。



遠藤は黙って俯いた。


関根と呼ばれる男が画面の中で激しく踊り続けていた。






第二十章終わり

冒険科学妄想小説 マンダラーズロード 第十九章

場所は小倉大学。

瀬古教授の部屋に案内された三人。

遠藤と坂上は息を切らしていた。志村だけが部屋の中を興味深そうに
見回している。

「まあこちらへおかけください。」瀬古教授はソファに三人をすすめた。

教授は自分の机に座り坂上刑事を見据えるように言った。
「湯川君の死は自殺でかたずけられたんでしょうね?」

坂上は怪訝な顔で答える。
「それはまるで殺人なのに殺人にならないというのは皮肉だな。と言いたいようですね?
瀬古教授」
「まさか瀬古教授も湯川さんの死に疑問がおありなんですか?」遠藤が驚いた表情で答える。

瀬古教授はしばらく沈黙して笑顔を見せると
「貴方がた警察が出てくるとは思わなかったもんでね。自殺なら私のところまで来ることはないはずでしょう?
にしても そちらの女性は?座ったらどうですか?」
坂上と遠藤が振り返るとソファの後ろでボードを掲げていた。
{警察では理解できない殺人}と文字が書かれている。

「なんだその理解できないというのは?志村!」
坂上がうなる。
「まあまあそちらのお嬢さんは湯川君の死について何か知っておられるようだ。
さて何から話しますかね。」
「順を追って最初からお願いします。瀬古教授」
遠藤の顔に緊張が走る。


「彼が私の大学に尋ねてきたのは三ヶ月くらい前でしたかな。
私が青年期における引きこもりとニートの精神学について論文を書いているのを知ったらしいのでね。
それと彼が編集部でたまたま引きこもりとニートの問題についての記事を書いているというので。
そこで彼はあることにまで接近していたことがわかりました。」
「あることとは何です?」と坂上。
「ニートや引きこもりを対象にセミナーを開いている{引きこもりを救う会レジェンド会長トミー大島}
のことですよ。」
坂上は遠藤と顔を見合わせる。
「編集部で聞いた怪しい会のことだな」
「この引きこもりを救う会レジェンドの会長のトミー大島は全国の引きこもりやニートを抱え込んだ親たちから絶大な支持を受けていてだね。入会した人間たちは必ず就職してニートから立ち直れるそうだよ?
これが怪しいはともかくとしてだが。彼はこのレジェンドにも顔を出したそうだ。
そこでだ。奇妙な噂を聞きつけてしまったらしいね。」

「奇妙な噂?」

「それを貴方がた警察に話したところで何も解決にはならないのですよ」

「お話ししてもらえませんか?」

「彼は真面目な男でした。そこまで取材する必要はなかった。さすれば殺されることもなかったでしょうね。」

「やっぱり彼は殺されたんですね!」遠藤が叫ぶ。
「だからそれを調べるのは貴方がたの仕事ではないのですか?」
しばしの沈黙の後 坂上は志村にうなる。
「お前はどこまで知ってるんだ?この教授のことも知っていたな。隠してるなら
ここで捜査は終わりだ。俺は降りる。」
「ちょ ちょっと坂上さん!!」
「こいつら何かと隠しやがって俺はなもうすぐ定年なんだ。こんな自殺の事件を根堀する
する必要はないんだよ。違うか志村!捜査しろというならお前の持ってるカードを出せ!!
そうでなきゃやってられん。くだらん!!」

瀬古教授は穏やかな顔で志村を見つめる。

志村はボードをに目をやると何か指でボードに書き始めた。

それを見つめる三人。
志村は無表情のままボードに書いた文字を三人に見せた。

{電磁波兵器}

「電磁波兵器??なんだそりゃ?」
「意味が解らないですね」坂上と遠藤は目を丸くした。

「どうやらそこのお嬢さんは警察以上の捜査をしておられるようだ。」
「ということは教授あんたもこの意味がわかるというのか?」
「警察の方に話してもしょうがないから話しをしなかったのですよ。
湯川君の死はおそらくは電磁波兵器で亡くなったんではないかと私は思っています」

「なんだって!!!!!」坂上と遠藤は声を張り上げた。

「電磁波兵器という機器が日本でも存在しておるのですよ。
古くはアメリカで70年代に開発された兵器ですがね。
住宅内の監視、音声送信、そして、貴方がたには理解しかねるでしょうが、レーダーの技術を応用して、人間の思考を読みとることまで、可能。また、電磁波を照射して、頭痛などを誘発することができる。
この機器を使用すると、統合失調症などの精神疾患とよく似た幻聴・妄想などの症状を惹起することができる。
 遠隔から電磁波を利用しているため、物的証拠を得ることが困難。警察では無理だということですよ。
 これで、加害者の所在を知ることができますかね?だとして証拠は?」

坂上と遠藤は開いた口が閉じらない。

「《思考盗聴機》とも言うがね。
1・ターゲットの視界、思考、感触、快感がリアルタイムでモニター可能。
2・ターゲットに遠隔地から直接話しかける事が可能。音声送信。
3・ターゲットの感情を操る事が可能。
4・ターゲットの身体攻撃が可能。心肺機能停止も可能。
5・ターゲットの身体を操る事が可能。
つまりこれで殺せるわけだ。いや多くの人間は幻聴に耐えられなくなって自殺するがね」

遠藤がメモを走らせる。
「で では精神分裂症はこの兵器が原因だというのですか?!」

「精神分裂症ではなく統合失調症だよ。脳も周波数を持つラジオと一緒。
残念ながら貴方がたの知識不足でしょうな。脳波による幻聴は教えなければ完全に気づかない。
また、個人に固有の周波数があるため、自分の幻聴は他人には聞こえない。
医者は着眼点を変えないから幻聴の原因が未だに解明できない。統合失調
症として薬を出すだけだね。」

「ちょっとまった!こんなSFな話を信じろというのか?じゃあどうやって犯人を割り出せというんだ!」

「非常に残念なことです。ですからお話ししてもしょうがないと思ったんですがね。
貴方がた警察は私のところまできた。そして・・・・・。」

瀬古教授は志村に目を向ける。
「このお嬢さん。失礼。捜査官さんはそこでで私のところまできたのですね」
志村がボードを向ける
{YES}

「なんてこったい。俺たちには無理だ!こんな事件!」坂上は頭を抱える。
「待ってくださいよ 坂上さん。志村さんが我々と一緒にいるってことは捜査可能なんじゃないですか?」
遠藤が坂上を叩く。

「そこのお嬢さんは志村さんというのですね。貴方のような捜査官が早く出てくれれば全国の
幻聴や幻覚で悩んでいる被害者の方々を救えるかもしれませんね・・・・。」

「志村!俺たちで捜査できるというのか?」坂上が志村を睨みつける。

志村はニッコリえを微笑みボードをむける。
「貴方のクソ固い頭をやわらかくできるのならね}

「クソっ!」

「志村さんがいなければ今の話はしませんでしたよ坂上さん。そこで貴方がたが捜査を続けると言うのなら
私が知っている被害者の自宅を教えます。」

「被害者?」坂上が顔を上げた。
「その電磁波兵器の被害者ということですか?」と遠藤。

そこで穏やかだった瀬古教授が真剣な顔つきになった。
「レジェンドの会に入った被害者です。あくまでも刺激しないで捜査していただきたい
約束できますか?」

これには坂上も遠藤も首を縦に振るしかなかった。

{次の犠牲者を探せ}
遠藤は志村のボードの文字を思い出した。
「志村さん!あんたその被害者のことも知ってるんじゃないでしょうね?」遠藤がわめく。


志村はニッコリとまた笑い
{さぁ捜査を続けましょうよ}

とボードを差し出した。




第十九章終わり






妄想科学冒険小説 マンダラーズロード 第十八章


自称推理作家の本谷康夫であるこの俺は小説の制作にいきずまっていた。

問題は常に聞こえてくるこの30歳代の童貞達の幻聴である。

ノートパソコンに向い文字を打とうとすると
早速幻聴が聞こえてきた。

幻聴の声「今までの」「自分の中で」「なるほどね」「小さい頃から」

俺はぶち切れた「うるせーな!!くそったれが!!!なにが今までのだ?童貞野郎が!!」

幻聴「あ 怒っちゃった」

「・・・谷さん。本谷さん!!!」
気がつくと俺は肩を吉田良子に叩かれていた。
「どうしたんですか?いきなり怒鳴ったりして」
「あ いや・・・・なんでも・・・ないです」

俺は振り返るとメガネ顔の吉田良子のでかい胸が当たった。

「うわっ!!!」俺はのけ反る。
「だ 大丈夫ですか?本谷さん」
「いやだから 君 ちょっと近寄りすぎでしょ!」
「すすすいません!!本谷さん」

このメス牛めが!!!俺は心底ゾッとした。

「あのですね 小説の邪魔になるのでね。ですから・・・」
俺は息を整えた。

すると俺はあることに気がついたのである。
吉田良子と話しているときには幻聴が聞こえなくなるのだ。

「あれ?おかしいな?」俺は吉田良子に目をやった。
吉田良子はキョトンとした顔で茶の間に座り俺を眺める。
「なにがおかしいんですか?
「いや なんでもないです。と とにかく」
俺は息を飲んで答えた。
「私がパソコンに向かってるときはその場から私に近寄らないでいただきたい」
「えっ・・・・・・」
吉田良子の目にみるみるうちに涙がたまる。
「もしかして わ 私 仕事のお邪魔をしたんでしょうか?ううっううっす
すいませんすいません!!!」
吉田良子が深々と土下座をしてすすり泣きはじめた。

「いや ・・吉田さん 決して邪魔というわけではないですから あのちょっと顔が近いというだけでね。ね。
あの泣かないでください。」

全くなんという牛女なのだこいつは!!!

「私 先生のお邪魔しないようにがんばりますからどうか どうか見捨てないでください!」
「見捨てるも何も貴女が仕事をくれないと私が困るんですよ」
「ではお怒りではないのですか!?」
吉田良子が顔を上げる。メガネはひん曲がり髪はぐちゃぐちゃで涙で落武者のような顔になっている。
「いや。・・・お怒りではないですから。さぁ顔を上げてくださいよもう」
「ありがとうございます!!!」
吉田良子に笑顔が戻りその巨大なカボチャのような二つの胸がはちきれんばかり揺れる。


貧乳好きな俺にはまさに地獄だった。胸のことを言ったりなんかしたらこの牛女はまた泣きわめくにちがいない。
しかしそういう問題ではない。仕事をしなくては生活できないのだ。
とにかく俺はこの仕事をやるしかないんだ。
それはそうとこの牛女にこの幻聴のことを話してもしょうがないし第一信じてもらえないだろう。
もっと話がややこしくなるだけだ。
というかこの女が俺の部屋に来るようになってから幻聴が始まったんじゃないか?
こんな変な仕事を引き受けたのがいけないのだろうか?
いや俺は疲れているんだ。きっとそうだ。

「つか・・・・・」
俺は腹が減ってきた。怒ると腹が減るわけだよな。

幻聴「なんで腹が減るんだ!!この声聞いたら食欲なくなるだろ!!」

また 童貞の声だ。
あのね。童貞くん。人間は怒るとハングリーになるんだよ?

幻聴「ハングリー?なんだそのアニメは?」

おいおいおい。この童貞は英語もわからんらしい。


「腹減ったな・・・・・」俺はぼそりとつぶやく。

「ああ お腹がすいたんですか!!本谷さん!」吉田が顔をほころばせる。
「今夜はお鍋ですよ!!」
吉田がネギが飛び出たスーパーの袋を台所から持ってきた。
「いっぱい食べていい作品を書いてくださいね!私 今から用意しますから」
吉田良子が台所に向かう。
「いや・・・ちょちょ・・・なんであんたが食事の用意を・・・」
俺は唖然とした。

台所から異様な歌声が響き始めた。
台所に立ち食材をいじりながら吉田が歌っているのである。
「血眼になって赤ん坊埋めるうぅ~♪おばあちゃん~♪」

その歌はなんなんだ!!一体!!!

俺はへろへろになりながら机に座った。




**********

「どういうことだ!!」
マイクをミュートにして関根が叫ぶ。
「なんでこの男は食欲が減らないんだ!!」
夕方五時から出勤のタカはまだきてないから関根一人で
本谷の相手をしているが全くこの男は怒りくるうだけで
幻聴にびくともしない。

関根はイライラした。

本谷め!!ぜってーに殺してやるからな!!
まあせいぜい巨乳の子と人生の最後を楽しむんだな。んばほへ!!
「よし休憩だ!!」
関根はマンダレイのコンピュタールームから出て廊下を踊りながら
北口のトイレに向かった。アニオタ共がまだ店内をうろうろしてやがる。
全くウゼーぜ!!ビシッ!!

いつものように右から二番目の便所に入ると関根はドアを閉めて
今日のオカズの声優を選び始めながら便器に座る。
するととなりの便所から壁を叩く音がする。

「関根か?」

こ この声は!

マンダラーズの総司令官である古田社長の声だ!!!!

関根は便器から立ち上がり敬礼をする。びしッ!!
「敵は死んだか?」
社長の熱いハートである声が壁を通してビンビンに伝わってくる。
俺のハートもビンビンだぜ!!
「まだですが必ず倒してみせます!!!」
「そうか ところで今日は何で抜いた?」
関根は緊張しながら答える。
「今どの声優で抜こうか迷っていましたところであります!!」
ビシッ!!
「そうか俺はクシャナだ。早く敵を倒せ。以上」
となりの便所のドアが開き社長が出ていく音が聞こえた。
ハーフーー!緊張したぜ!!
社長も俺に期待度ゾッコンだぜ!!
ぜってーに本谷は殺してやるぜ!!
(殺すというか奴に近寄ったら怖いから自殺に追い込むんだけどね幻聴作戦で)

今日の声優が決まったので
早速ズボンを全部脱ぐことにした。





第十八章終わり






妄想科学冒険小説 マンダラーズロード 第十七章


第二部



私の名前は二宮クララ。勿論偽名だ。
私はマンダラーズ株式会社の闇組織である
殺戮部隊マンダレイのトップリーダーである。

場所はマンダラーズ株式会社内。

「今日の関根38号の状態はどうだ?」
直属の部下の時田に聞く。
「はっ!問題なく今日も徹夜で幻聴電波装置で遊んでいます」
「今度の関根38号は使えそうだな」
「さすがですよ。あのテストでトップの成績で流れてきましたからね」
時田はニヤニヤ笑い出した。
「おい。気おつけろ。社長がその顔を見たら激怒するぞ」
「はっ!失礼いたしました」
私は時田と別れ社長室へ向かう。
昨日の電話では社長はかなりのお怒りの様子だった。
嫌な予感がする。また幻聴兵器のターゲットが決まったのだろう。

社長室のドアを叩く。
「二ノ宮クララです」
しばらくして部屋の奥から声が響く。
「入れ」

社長室に入る。真っ赤と黒との二つに塗りかためられた部屋の
ソファーに古田益三社長が座っていた。

「早速だがこれを見ろ。」
「なんでしょうか?」
社長が一冊の文庫本を私に差し出す。
何の変哲もない薄っぺらい推理小説だ。
作者の名前は本谷康夫。
聞いたこともない名前だ。
「この本がいかがいたしましたか?」
「いたしましたかじゃねぇ!!!」
みるみるうちに社長の顔が赤くなっていく。
いまにもラーメンのような金髪ヅラが落ちそうだ。
勿論 ヅラでしょ?とは言えない。が。

「ページの折れた所を読んでみろ!!!」
社長に言われるまま折り目が付いたページを開いて読んでみる。

「この事件の犯人は古田益三!お前だ!」

このように書かれていた。ご丁寧に赤線まで引いてある。
社長が引っ張ったのだろう。

「この俺のこの俺の名前が小説の殺人犯人になってるんだぞ!!
この作家は俺を殺人犯として書いているんだ!!」

なわけねーだろ?ただの推理小説じゃねーか?
と突っ込みを入れたかったがこの男にそんなことを言っても無駄なのはわかっている。
「殺せ!今すぐこの男を捜して殺せ!」
また始まったなこの気の弱い男の殺せグセ。

「幻聴電波装置で自殺させろ!今週中に!」
社長は怒り狂っていた。
まあ毎度のことだが前回のターゲットは自殺まで三ヶ月かかっている。
今回のターゲットは作家だ。そう簡単にはいかないだろう。
「お言葉ですが社長。一週間で殺せるスケジュールは無理と思われますが・・」
「聞いているぞ!今度入った新人はかなり使えるバカらしいじゃないか!
徹夜でやれ!」
「関根38号とタカ45号のことですか?」
「関根とタカというのか?大島から聞いているぞ。かなり優秀なバカらしいじゃないか」
だいぶ社長の怒りがおさまってきたらしい。
「まずこの本谷康夫の調査に一週間下さい。相手の動きがわからなければ
いくら優秀なバカでも利用できませんよ。」

私は冷静に社長の顔を見る。
社長は机の電車のオモチャをなでながら私を睨みつける。
「わかった。クララお前にまかせよう。トップリーダーのお前なら
私の怒りが解るよな?な?な?な?」

でた 「な」の三連発だ。この男の口癖だ。

私は社長室を出ると時田を呼び出した。

「作戦開始だ。忙しくなるぞ」
時田の顔が引き締まる。
「今回はターゲットが決まるのが早いじゃないですか?」
「社長のお遊び殺人のおかげで我々は生活しているということを忘れるなよ」
私は時田に作戦指令を出す。
「関根38号がどれほどのバカか見せてもらおうじゃないか。」

私はマンダレイのコンピュータールームへと向かった。




第十七章終わり。

妄想科学冒険小説 マンダラーズロード 第十六章


一台の車の車内。
運転するのは遠藤刑事助手席に坂上刑事
そしてバックシートには・・・・。

「なんか嫌なムードじゃないですか?これって!」
遠藤が運転しながら叫んだ。
坂上は車に乗ってから無言だった。
バックシートをちらりと見ると遠藤を睨みつける。
「お前が悪いんだからな」
「ちょっとまってくださいよ。僕は事件解決に一生懸命だったんですよ。
それなのになんですか。この人会ってから一度も口聞かないし!」
バックシートに座っているおかっぱ頭の志村が銀色のボードを前に突き出す。
ボードの文字

{ちゃんと前向いて運転しろ。ボケ。}

その文字をみた遠藤が叫ぶ。
「なんなんですか この女!!」
「おいおい!前見ろ!信号赤だ 赤!!」
坂上が怒鳴る。

しばしの沈黙の車内。


「上の命令なんだからしょうがないだろ。早くその湯川の知り合いの
小倉大学の教授んとこに向かうんだよ」
「わかってますよ。行けばいいんですよね。行けば。」
「お前がそんなんでどうする。このヤマはただ事じゃねーんだぞ。
課長のあの態度 それにこの意味不明な女捜査官。俺は冷静だ」
坂上は胸のポケットからタバコを取り出した。
「坂上さん!」遠藤がそれをみてうなる。
「あっ すまん」
「どこが冷静なんですか?ちっともじゃないですか!」

車は小倉大学のキャンパスに到着した。


受付窓口で警察手帳を出す坂上。その後ろに遠藤。
「すいません警察のものですがこちらで教授をなさっている瀬古治郎さんに会いたいのですが」
窓口の警備員がかしこまって答える。
「えーと瀬古教授ならこのの時間ですと研究室におられると思いますが」
「その研究室はどちらで?」
そこで遠藤が坂上の肩を叩く。
「ちょちょっと坂上さん!あれ!あれ!」
さかがみが振り返るとキャンパスの向こうで志村がボードを頭上にかかがけている
ボードのには
{→}の記号。

警備員が答える。「あああの矢印のほうですよ。それから次は・・・」

坂上が叫ぶ。
「あの女 最初から教授のこと知ってやがったな!!」
「ど どういうことです?つかあの矢印は?」遠藤が矢印をみる。
「俺たちを誘導してるんだよ。ったくどこまで知ってやがんだあの志村ってやつは!」

坂上と遠藤が志村の後を追う。

また志村が向こう側の階段の前でボードをかがげた
{←}
「矢印の通りに行けば教授のとこってことですか?これって???」
「あのアマ!」

散々志村の後を追う二人。
しばらくして一つのドアの前に着く。
志村がボードを胸の前に差し出す。
{ココでーす}
ぜーぜー息を切らす遠藤と坂上。
「ど ど どう考えても無駄なルートだったと思うんですけどこれ。はーはー」
「ぜーぜー最初から警備員に案内されりゃよかったなクソ!」
ドアが突然開き坂上の体にぶち当たった。倒れる坂上。
「だ 大丈夫ですか!坂上さん」遠藤が助け起こす。
志村のボードには
{マヌケ}
ドアからでてきたのは白髪の老人だった。
「あんたたちは誰かね?」
坂上が起き上がりながら答える。
「はぁはぁ あなたが瀬古教授ですか?」
白髪の老人は目を丸くしながら
「いかにもそうですが?」とこの三人を不思議そうに見つめる。
「我々は警察のものです。実は先日亡くなれた湯川さんのことでお話が聞きたいのですが。
湯川さんをご存知ですよね?」
「湯川くんが亡くなった???それは!」
瀬古教授は一瞬驚きの顔を見せたがすぐ顔を曇らせた。
「わかりました。ここじゃなんですからな。どうぞ中へ。」

遠藤と坂上と志村は瀬古教授の研究室に入っていった。



第十六章終わり。


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