vol.3 ありがとうの島 | 稲本健一の「本当に伝えたいこと」

vol.3 ありがとうの島

ありがとうの島

先日、宮城県の気仙沼港からフェリーで20分、大島という島に出かけました。ここでは友人数人がプロデュースに参加した、気仙沼ランフェスタ!というランニングイベントが開催されています。
大島では元々、気仙沼大島ツバキマラソンというハーフマラソン大会が行われていましたが、震災による津波で島の両側から被害を受けた大島では、島民の方々もランイベントの開催には賛否両論だったと聞いています。走る事で果たして、復興への応援になるのか?色々な問題をクリアして、物凄く短い準備期間でなんとか開催にこぎつけたイベントでした。
まず、気仙沼港の周りを回らせて頂き、まだまだ進まない復興の現場を目の当たりにし、フェリー乗り場へ、、、幾つもの桟橋が壊れたままの港から大島へのフェリーに乗り込みました。大島に着くまでの間も、美しいリアス式海岸を恐ろしい津波が襲った爪跡を何度も目にします。到着した大島の港は全て津波で流され、何も無い荒地にチケット売場と売店の仮設プレハブが並ぶだけ、、ただ迎えて下さった、島民の方々の笑顔がとても素敵でした。
今回は津波後初めて1000人以上の方が島にわたり、高台に有り難を逃れた宿は何処も満室!僕も友人10名が泊まる大部屋で雑魚寝でした、、楽しかったけど。参加選手以外にも大会運営のお手伝いの為に島に渡ってくるボランティアの方も沢山いらっしゃいました。

大会当日、大きなグランドが一杯になるくらい沢山の人で溢れた会場は朝から賑わっていました。
海沿いの小道に作られたSTARTゲートから、まず10kmそしてハーフマラソンとスタートします。
イナケンは友人5人とスタート。
初めて走る島の道はアップダウンが激しくかなり厳しいコース。走りだし美しい島の景色から海岸を見渡せる下り道を走り過ぎた途端、風景は一変します。左には数百台の流された車が山積みに、右には瓦礫が木材、プラスティック等に分けられ幾つもの山ができています。瓦礫の間を走りながら、この島が津波で大きな被害を受けた島である事を思い出します。しかし、またそこを抜けると豊かな自然と島の方々の素晴らしい笑顔に癒されます。しばらく走ると、いつもと違った感覚に気が付きます。
普通マラソンを走るとほとんどの応援の方に「頑張れ~」と声をかけられます。しかし、このマラソンは島の皆さんが走る私たちに「ありがとう!」と声をかけてくれるのです。それどころか沿道で車椅子で応援してくれていたおばーちゃんは手を合わせて何度も「ありがとう、ありがとう」と伝えてくれる。10km2周と少しのコースの2周目はありがとうに包まれて走っている感じがしました。沿道の島の子供達、おじいちゃん、おばあちゃんとハイタッチしながら走るマラソン。。。もの凄く、素敵な体験でした。

勿論走る事で復興が叶うほど簡単な物では無い事は分かっています。走る位だったらもっと他にやれる事があるだろう、と言う意見も理解できます。ただ、走ってみて感じた事はきっと島の人が1番必要としているのは日常だと言う事。もう一度、日常を取り戻す事がとても大事な事なんだ。
まだ、復興への道のりは遠いけど日常を思い出させてくれるマラソン大会に、そして津波から初めてこんなに沢山の人が島に渡って来た事に、大島の観光や漁業の復活への希望を感じる事が出来たのかも…と思いました。

あんな厳しいコースをあんなに暖かい気持ちで走らせてくれたのは大島の皆さんの「ありがとう」でした。そのありがとうに返す言葉は「ありがとう」しか思いうかばず。最後はありがとうを伝え続けながらゴールに向かいました。

また、来年も必ず走りに行こう。
今度はこちらから「ありがとう」を伝えながら走ってみたい。

何度か被災地に行くと、必ず元気を貰って帰ってきてしまう。。
ちゃんと元気を伝えられているか、心配になる。


大島の皆さん
ありがとうをありがとう

人も景色も美しい島でした。

イナケン



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