問題文
http://www.moj.go.jp/content/000055155.pdf
第1問
1 不動産業者Xの事務所に立ち入った行為の適法性
警察官は、甲の着衣からそれぞれ覚せい剤を発見しており、甲に対して、現行犯で逮捕する旨告げているので、逮捕に着手しており、「逮捕する場合」(220条1項)にあたる。
その状態で、甲は、Xの事務所に逃げ込んでいる。そうであるとすれば、Xの事務所に立ち入り、甲を捜索したことは、「必要」(220条1項)的な措置であり、適法である(220条1項1号)。
2 甲が隠れていた机の引き出しを開けて中を捜索した行為の適法性
(1) かかる行為は、220条1項2号に基づく捜索として適法であるといえるか、220条1項2号が無令状なくして捜索を認めている趣旨と関連して問題となる。
(2) この点、220条1項2号の趣旨は、逮捕の現場には証拠が存在する蓋然性が高く、捜査の便宜を認める必要があると同時に、すでに逮捕により人身の自由という大きな法益が制約されている以上、住居や身体のプライヴァシーという相対的に小さな法益を無令状で侵害してもよいという点にある。
そうだとすれば、220条1項2号の「逮捕の現場」とは、被逮捕者の管理権が及ぶ場所というように限定的に解すべきである。
(3) これを本件についてみると、甲は、たまたまXの事務所に逃げ込んだだけだから、甲とXとは無関係であり、Xの事務所に甲の管理権が及んでいたということはできない。
そうだとすると、Xの事務所は「逮捕の現場」にあたらず、警察官の上記行為は、220条1項2号に基づかない無令状捜索として違法である。
3 警察署内で乙の身体を捜索した行為の適法性
(1)警察官は乙を逮捕した現場から、乙を警察車両に乗せて1キロメートルほど離れた警察署に連行し、警察署内で乙の身体を捜索しているが、かかる行為は、「逮捕の現場」(220条1項2号)とはいえず、違法となりそうである。
(2) しかし、被逮捕者を逮捕現場から移動させても、身体に証拠が存在する蓋然性および証拠隠滅のおそれは変化しない。したがって、逮捕現場での捜索が困難な事情があるときは、逮捕現場以外の場所で、被逮捕者の身体について捜索をすることは許されると解すべきである。
(3) これを本件についてみると、逮捕の現場で乙は大声でわめき暴れるなどしたことから、周囲に野次馬が集まってきており、また、逮捕の現場も道路であるということに照らせば、そこで捜索を行うことは、乙の名誉を害するし、現場付近の交通を妨げるおそれがある。そうだとすれば逮捕現場での捜索が困難な事情があるということができる。したがって、捜索の実施に適した場所である警察署に連れて行ったうえで、捜索を行った行為は、適法である。
第2問
1 甲の手書きのメモは、Aを殺害してから死体遺棄をするまでの犯行計画を記載したメモである。かかるメモは、証拠能力が原則的に否定される伝聞証拠(320条1項)に該当するのではないかが問題となる。
2 この点、伝聞証拠とは、公判廷外の供述を内容とする証拠であって、供述内容の真実性を立証するためのものをいう。
そうだとすれば、検察官は、甲の手書きのメモで、メモ記載時のAの犯行計画意図を立証しようとしていることが考えられる以上(記載当時の意思を立証することでAの犯罪の実行を推認する)、記載内容の真実性が問題となり、上記メモは伝聞証拠に当たりそうである。
3 しかし、伝聞証拠の証拠能力が原則的に否定される趣旨は、人の供述には、知覚・記憶・叙述の過程があるところ、それらの過程に混入する誤りを伝聞証拠では反対尋問で是正できない点にある。しかし、上記メモを現在の精神状態の供述としてみてみると、知覚記憶の過程を欠いており、叙述の真摯性は、反対尋問以外の方法によっても検証することが可能である。したがって、上記メモは、非伝聞であると解するべきである。なお、供述の真摯性については、一般的な証拠の関連性として要求される要件であると考える。
4 これを本件についてみると、上記メモは、メモ記載時の犯行計画意思を立証するものであるといえるので、非伝聞である。そして、メモ記載どおりに、Aがレンタカーを借りており(①の部分)、Aの死体から睡眠薬の成分が検出され(②の部分)、Aは絞殺されており(③部分)、X橋の下からAの死体が発見されている(④部分)という客観的事実が存在することからすれば、メモ記載時の供述の真摯性も認められるから、証拠の関連性も認められる。
したがって、上記メモについては、証拠能力が認められ、証拠として用いることが可能である。
http://www.moj.go.jp/content/000055155.pdf
第1問
1 不動産業者Xの事務所に立ち入った行為の適法性
警察官は、甲の着衣からそれぞれ覚せい剤を発見しており、甲に対して、現行犯で逮捕する旨告げているので、逮捕に着手しており、「逮捕する場合」(220条1項)にあたる。
その状態で、甲は、Xの事務所に逃げ込んでいる。そうであるとすれば、Xの事務所に立ち入り、甲を捜索したことは、「必要」(220条1項)的な措置であり、適法である(220条1項1号)。
2 甲が隠れていた机の引き出しを開けて中を捜索した行為の適法性
(1) かかる行為は、220条1項2号に基づく捜索として適法であるといえるか、220条1項2号が無令状なくして捜索を認めている趣旨と関連して問題となる。
(2) この点、220条1項2号の趣旨は、逮捕の現場には証拠が存在する蓋然性が高く、捜査の便宜を認める必要があると同時に、すでに逮捕により人身の自由という大きな法益が制約されている以上、住居や身体のプライヴァシーという相対的に小さな法益を無令状で侵害してもよいという点にある。
そうだとすれば、220条1項2号の「逮捕の現場」とは、被逮捕者の管理権が及ぶ場所というように限定的に解すべきである。
(3) これを本件についてみると、甲は、たまたまXの事務所に逃げ込んだだけだから、甲とXとは無関係であり、Xの事務所に甲の管理権が及んでいたということはできない。
そうだとすると、Xの事務所は「逮捕の現場」にあたらず、警察官の上記行為は、220条1項2号に基づかない無令状捜索として違法である。
3 警察署内で乙の身体を捜索した行為の適法性
(1)警察官は乙を逮捕した現場から、乙を警察車両に乗せて1キロメートルほど離れた警察署に連行し、警察署内で乙の身体を捜索しているが、かかる行為は、「逮捕の現場」(220条1項2号)とはいえず、違法となりそうである。
(2) しかし、被逮捕者を逮捕現場から移動させても、身体に証拠が存在する蓋然性および証拠隠滅のおそれは変化しない。したがって、逮捕現場での捜索が困難な事情があるときは、逮捕現場以外の場所で、被逮捕者の身体について捜索をすることは許されると解すべきである。
(3) これを本件についてみると、逮捕の現場で乙は大声でわめき暴れるなどしたことから、周囲に野次馬が集まってきており、また、逮捕の現場も道路であるということに照らせば、そこで捜索を行うことは、乙の名誉を害するし、現場付近の交通を妨げるおそれがある。そうだとすれば逮捕現場での捜索が困難な事情があるということができる。したがって、捜索の実施に適した場所である警察署に連れて行ったうえで、捜索を行った行為は、適法である。
第2問
1 甲の手書きのメモは、Aを殺害してから死体遺棄をするまでの犯行計画を記載したメモである。かかるメモは、証拠能力が原則的に否定される伝聞証拠(320条1項)に該当するのではないかが問題となる。
2 この点、伝聞証拠とは、公判廷外の供述を内容とする証拠であって、供述内容の真実性を立証するためのものをいう。
そうだとすれば、検察官は、甲の手書きのメモで、メモ記載時のAの犯行計画意図を立証しようとしていることが考えられる以上(記載当時の意思を立証することでAの犯罪の実行を推認する)、記載内容の真実性が問題となり、上記メモは伝聞証拠に当たりそうである。
3 しかし、伝聞証拠の証拠能力が原則的に否定される趣旨は、人の供述には、知覚・記憶・叙述の過程があるところ、それらの過程に混入する誤りを伝聞証拠では反対尋問で是正できない点にある。しかし、上記メモを現在の精神状態の供述としてみてみると、知覚記憶の過程を欠いており、叙述の真摯性は、反対尋問以外の方法によっても検証することが可能である。したがって、上記メモは、非伝聞であると解するべきである。なお、供述の真摯性については、一般的な証拠の関連性として要求される要件であると考える。
4 これを本件についてみると、上記メモは、メモ記載時の犯行計画意思を立証するものであるといえるので、非伝聞である。そして、メモ記載どおりに、Aがレンタカーを借りており(①の部分)、Aの死体から睡眠薬の成分が検出され(②の部分)、Aは絞殺されており(③部分)、X橋の下からAの死体が発見されている(④部分)という客観的事実が存在することからすれば、メモ記載時の供述の真摯性も認められるから、証拠の関連性も認められる。
したがって、上記メモについては、証拠能力が認められ、証拠として用いることが可能である。