結局、嫁は会社に行かなくなってしまった。


電車に乗れない、人混みを見ると

動悸がするというので

クルマで送って行ったのだが

会社前で車を降りることが出来ず

少し離れたところに移動して

ワンブロックほど散歩してみて

帰宅することにした。


在宅勤務ならできるらしく

寝室から聞こえてくる

電話の声も弾んでいるが

夕方、仕事が、終わる頃からは

相変わらず部屋から出てこない。


ついに在宅時は夕飯を作ることも

やめてしまった。

今日は在宅の嫁が夕飯を作るはずなのに。


7時を回るころは仕事に集中していたが

多分、何か用意してるだろうと

たかをくくっていた。


8時を回り、キッチンに行くと

真っ暗なまま。娘に、夕飯は? と聞くと

「まだ」という。


寝室にいる嫁は起きていた。


夕飯いらないんだ、と、ぶっきらぼうに

声をかけて、娘を近所のファミレスに誘う。

めんどくさそうに着替えた娘と家を出たが

スーパーの前で、弁当にするか?

と尋ねると、そっちの方がいいらしい。

娘は外食より、家食を好むのだ。


適当に弁当やら惣菜やらを買ったが

嫁の分は考えていない。

全部自分で食べるにはちょっと多いが

お腹が空いてるイライラもあり

構わず袋にぶち込む。

帰宅して、片っ端から電子レンジで

温める端から貪るように食べた。


途中、様子を伺いにきたのか

嫁がやってきたが、無視して

食べていたら、嫁は冷蔵庫から

グレープフルーツを取り出してむきはじめた。


食欲ないし、作りたくないなら

早めに言えよと思いつつ

会社に行かないことを気に病んでることなんて

これっぽっちも同情するつもりなく

食べ終わったゴミを片付けて仕事に戻った。


離婚まで、あと2067日。