検査結果は、案の定、処見なし。

何も異常が見られない以上

救急診療としてはここでおしまいとなる。


だが、嫁は起き上がれないという。


気力の問題なのかもしれないが

ラクになってから検査したり

動けるまで休ませてもらったのでは

どこが悪いのか、原因がわかるはずもない。

むしろ自分の体をいろいろ確かめて

何ができて、何ができないのかを

確認した方がいいのに。


すいません、嫁が起き上がれるまで

休ませてもらえますか?

お財布を忘れたので、ちょっと自宅に戻って

とってきますから。


嘘、財布も保険証も持ってきている。

三者面談に行きたいだけなのだ。

医師は財布忘れたと聞いて

外出を許可してくれた。


外へ出ると、暴力的な暑さ。

タクシーを拾おうと大通りに出たが

今日はみんなタクシーに乗りたいのだ。

空車は一台も見つからない。

家まで歩いて15分ほどだろうか

仕方なく炎天下、歩いて帰った。


面談を終えて、娘と病院に向かうと

嫁はケロッとした顔でベッドに座っていた。

仮病だったとは思えないので

何かしら体調不良の理由はあるのだろうが

本人がその原因を探ろうとしないのは

僕には理解できなかった。

しかし今はそこを追及するより

黙って嫁のいうことを聞いてあげることしか

できないだろうし、やっちゃいけないのだ

ということもわかっている。


何やら娘に「本当に大変だったんだよー」

と嫁は話しているが、もっと前から

自分の体の状況について話してもらえれば

こんなにバタバタすることはなかったのに。


ここの病院は、以前通っていたことがあるので

会計の手順から何からよくわかってる。

スムーズに支払いを終え

クルマを玄関口に寄せて自宅へ戻った。


帰ってすぐに、嫁は寝室のベッドで

横になった。ゼリー飲料を買ってきて

いるかと聞くと、いらないという。

体調は万全でないとしても

原因も、いまの状況もわからなければ

対応のしようがない。

僕は自室で仕事することにして

娘にも夏休みの宿題でもしてれば

と声をかける。夕飯は早めにするから、と。


夜10時ころ、リビングに戻ると

嫁は楽しそうに、救急病棟で見聞きしたことを

娘に話している。娘は明日の夏期講習に

持参するお弁当の準備をしながら

それでも昼間の不安そうな表情は消えていた。

三者面談の話しも、交えながら。

いつも熱帯夜なのに冷え込んでいる我が家だが

今夜は少しだけ、あったかい夜を迎えていた。


離婚まで、あと、2074.日。