「今日は夕飯作りたくないので

何か買ってきてください」


8時を回り仕事を終えると

嫁からLINEが来ていた。


娘に。ご飯食べた?

とLINEすると「食べたよー ラーメン」

と冷凍庫にあったのを食べたらしい。


今日は嫁の誕生日だった。

僕は仕事で、嫁は休日。

家にいる方が夕飯の準備をする

暗黙の了解で、担当するのは嫁のはず。

自分の誕生日に家事をするのが嫌だったのか。


去年の同じ日も僕は仕事で

前日の休日に家で寿司を食べたと記憶している。

今年は相談もなく、何も伝えて無かったが

数日前に娘がネットで「これ買っといて」と

嫁の好きそうな誕プレを指定してきたので

買っておいたぐらいだ。


「プレゼント渡した?」と娘に送ると

「うん」と帰ってきた。続けて

「ママなんでご飯作らないの?」と送ると

「?」と短い返信。

「ケーキ買ってく?」と聞くと

「できれば」と言ってきたので

娘も嫁も大好きなマンゴーのケーキを帰った。

ついでに2割引きになっていた唐揚げ弁当も。


帰宅するとキッチンには

娘が食べたラーメンの丼が。

嫁は何を食べたのか知らないが

この時間まで何も食べないことは

考えられないので、夕方どこかで

食べてきたのだろう。

相変わらず寝室暮らしの嫁に

聞くよしもない。


「ケーキあるよー」と娘が嫁を呼びに行く。

しばらく音沙汰なかったが

好物のマンゴーケーキに娘がはしゃいでると

嫁が寝室から出てきた。

待ちきれない娘がもうフォークを入れている。


ママの誕生日なんだからママが先だろ

と、言うと、「まぁまぁ」と言いつつ

マンゴーをつまんでいる。


案の定不機嫌そうな嫁も

フォークを待って、ケーキをつまみ出した。


「……はやく言ってほしいんだけど…」

嫁が誰に言うとはなしに呟いた。


それって僕が仕事で帰りが遅くなったことを

言ってるのか、それとも

今日はケーキを買ってくることを

先に伝えて欲しかったのか。


僕は聞こえないふりをして

唐揚げ弁当を頬張っていた。

買ってきたケーキは娘と嫁がつつきまくって

残骸みたいになった残りを僕が平らげて

30分もかからずに

嫁の誕生日パーティーは終了した。


離婚まで、あと2113日。