珍しく時間があったので
夕飯に天ぷらを揚げた。
ナスとピーマンとさつまいも
玉ねぎとニンジン、帆立のかき揚げ。
久しぶりにフライヤーを起動して
フライパンのほうが早く揚がるけど
のんびり夕飯の時間まで
料理を楽しむことにした。
嫁が働きに出るようになり
在宅で仕事をすることが多い僕が
夕飯を作るようになったのは
いつからだろう。
それまで、子育ては協力してきたけれど
家事には一切、手を出さなかった。
キッチンは嫁の牙城だから、と
足を踏み入れないようにしてきたし
買い物はクレジットカードを渡して
なんでも好きなもの買っていいよ
と言ってきたので、毎月、嫁は
10万以上も食費やらなんやらかんやら
自由に使ってきた。
娘の教育費や、将来のことを考えて
嫁が働きに出るようになると
嫁の収入はすべて貯蓄に回すようにした。
とはいえ、いくら貯まっているのか
僕は知らないし、聞くこともないので
嫁はひとりで投資の勉強をしたり
していたようだ。やがて、嫁は
自分の給料と僕のクレカと合わせて
結構な金額が毎月使えることになったので
洋服やら自転車やら、寝室の模様替えやら
勝手に始めるようになった。
余計な出費に一言物申したことがある。
娘の教育費なんじゃないの? と。
すると
「全部、娘のために使うつもりはないよ」
確かに嫁が働いて得た給料だし
少しくらい自分のために使ったっていい。
その時はそう思って、以来何も言わずにいる。
僕の仕事がコロナで縮小したこともあり
クレカを返却してもらった頃から
嫁が家事をしなくなったように思う。
食材を買ったり、トイレットペーパーや
ティッシュ、洗剤の類を買ってこないので
気がつくと切れている事が増えて
僕は家の維持のためにドラッグストアと
スーパーマーケットを行き来するようになった。
生活費は相変わらず
僕が全部を負担している。
嫁がいくら貯めているのかは知らない。
さっき帰ってきた嫁が
天ぷらを揚げているキッチンを見て
聞こえるか聞こえないかぐらいの声で
「明日、唐揚げにしようと思ってのに」
と呟いた。
離婚まで、あと2144日。