嫁が在宅勤務の日だと知ったのは

朝、娘を送り出す時間なっても

嫁が出勤の身支度に起きてこなかったからだ。

僕は夕方から外出の予定があったので

昼過ぎまでは仕事部屋に篭っていた。


4時頃、出かける準備をしようと

寝室に入ると、在宅勤務のはずの嫁は

いつものようにベッドの中で

スマホを眺めていた。


何も話し掛けることもなく

何も話しかけられることもなく

僕は着替えを手にリビングへ行き

身支度を済ませると何も言わずに家を出た。


行き先も、何時に帰るかも告げず

家を出るのが我が家の常識だからだ。


以前は必ず、行き先と帰宅時間を

家族に告げてから家を出るようにしていた。

少なくとも、僕はそういう家で育ったからだ。

しかし嫁はいつも何も言わずに家をでる。


何度か、行き先と帰りの時間だけは

残していってほしいと頼んだのだが

2〜3回はやってくれるが

いつのまにか有耶無耶になる。

そうして娘も同じように、学校から帰ると

何も言わず出かけていくようになってしまった。

事故があったり、なにか危険なことに

巻き込まれても、これでは対応できない。

そう言って、諭したこともあるが

娘は「?」という顔をしていた。

母親が何も言わずに出かける家に育ったら

そりゃ、そうなるだろう。


仕事仲間と夕飯を済ませ

終電間際に帰宅すると

キッチンには冷めたお好み焼きがあった。

夕飯はお好み焼きだったらしい。

家で一番大きいフライパンで焼いた

まるまる一枚のお好み焼き。

嫁と娘はこのサイズをひとり一枚食べないから

2人で一枚食べて、僕用に一枚焼いたのだろう。

ラップが掛かったお好み焼きの隣に

ソースとマヨネーズと、かつをぶしがあった。

僕はソースとマヨネーズを冷蔵庫にしまうと

仕事の続きをするため自室に篭った。

冷めたお好み焼きは明日

レンジでチンして僕が食べるのだ。


離婚まで、あと2168日。