とりあえず、無言のままのシズちゃんに中に入ってもらう。
「お茶、入れてくるから適当に座ってて」
「………」
何か喋れよ!なんて思いながら、台所にコーヒーをいれにいく。
ついでにお菓子なども持って戻ると、シズちゃんは相変わらず不機嫌そうなままで、ソファーに座っていた。
「はい、コーヒーとお菓子」
「……」
テーブルに二人分の飲み物とお菓子を置いて、シズちゃんの向かいに座る。
沈黙が、続く。その沈黙に耐え切れなくなった俺が口を開こうとした時、シズちゃんがぼそっと言った。
「なんで…」
「?」
「なんで、今日誕生日って教えてくれなかったんだ…」
酷く不機嫌にシズちゃんが呟いた。俺がきょとんとしていると、ため息を吐きながら言葉を続けた。
「さっき、セルティに会って初めて今日手前が誕生日って知ったんだよ。…手前の誕生日は、俺が一番に祝ってやりたかったのに、祝ってやりてぇのによぉ…。プレゼントも用意できてねぇし…」
…なんだろう。すっごい嬉しい。むすっとしているシズちゃんには悪いが、ときめいた。惚れなおした。
つまり、シズちゃんが今不機嫌なのって、俺の誕生日を一番に祝えなかったからでしょ?祝ってやりたかったぐらい、俺のこと好きってことでしょ?
…やばい、すっごく嬉しい。
「シズちゃん、」
「…んだよ、」
「今年はさ、俺も忘れてたんだ。自分の誕生日」
とたんに彼は少し呆れたような顔をする。俺は気にせずに続ける。
「だから、来年から、一番に祝ってよ。今日は、ずっと一緒にいてくれれば、それだけでいいしさ」
ね?と微笑みながら言えば、シズちゃんは少し考えるようにした後、小さく笑みを浮かべて頷いた。
「来年からはプレゼントもちゃんと用意して、ちゃんと祝ってやっからな?」
「あはは、楽しみにしてる」
はっぴーばーすでー
何でもない日から、特別な日になった、俺の誕生日。