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精神分析学者である、フロイトが、アインシュタインと、文通をつうじて戦争について語りあったときのやり取りが《人はなぜ戦争をするのか》という題名で刊行されている。この書簡が発表された年は、本年から数えて、ちょうど、九十年前にあたる。


フロイトの欲動論によれば、人間の欲動には『生の欲動』と『死の欲動』の二つがある。『生の欲動』は、生命を保存しようとする傾向だ。その一方で、死の欲動は、破壊しようとするほうの欲動である。

しかし、これら二つの欲動は、単独で動くことはない。生命の欲動には、破壊の欲動が結びついている。あるいは、それとは逆のこともある。

だから、戦争期には、破壊の欲動を、生命の欲動のほうにそらすことができるならば、人々を戦争の脅威から遠ざけることができる。

文化的な活動は、人を戦争から遠ざける、とフロイトは説いた。

そして、反戦運動というのも、われわれが戦争にたいする嫌悪の感情をもつということが動機となっている。道徳的な理由から戦争に反対することは、立派であるのはもちろんのことだけれども『戦争など、したくない』という感情だけでも、われわれが反戦の態度をとるにはじゅうぶんだ。


このような感情こそ、軽視されてはならない。反戦運動に参加している方々にとっては、戦争を嫌うような感情こそが、絶対的な根拠となるのである。


この話題について、私は、もっと長い文章を書いたのだけれども、どこで発表するか、検討中です。

今、語らなければならないことだと直感したため、このブログでも述べておこうと思いました。

(令和四年三月十一日)