先日、元NWA世界チャンピオン「テキサス・ブロンコ」ことテリーファンクの訃報が届きました。享年79歳。

テリーは少年時代のマイフェイバリットレスラーの一人であり、その反面、アンチ的気持ちを抱いたレスラーでもありました。

そんな愛憎渦巻く気持ちを抱いたテリーファンク。追悼の気持ちを込めて、書き綴ってみたいと思います。

テリーのファンになったのは(数多のプロレスファンと同じく)、1977年12月の世界オープンタッグ選手権で行われたザ・ファンクス対ブッチャー・シーク戦。

いまではガラスやら画びょうなど物騒なものが飛び交う、過激なデスマッチは当たり前ですが、当時はそんなエクストリームな凶器は欠片もない時代。

そんな中、突如として持ち出されたブッチャーの鋭利なフォーク。それがテリーの右腕にブッ刺された時のショックたるやもう...

大絶叫するテリー。鮮血が噴き出す右腕。幼い自分は思わずこたつに顔を埋めていたのを思い出します...

しかし、右腕を包帯でグルグルに巻いたテリーはなんと奇跡の大反撃。あの時のとんでもない大興奮は、長きにわたる自分のプロレスファン人生でも5本の指に入るでしょう。

言わずと知れたザ・ファンクスのテーマ曲。「テリー」コールが聞こえる...

それからというものテリーは、ガイジンでありながら日本で絶大な人気を誇るアイドルレスラーに。当時の会場は女性・少年ファンの黄色い声援が飛び交う異常事態。少ないおこずかいでテリーのレコード(内容は忘却の彼方。イメージソングが入っていたような気が...)を買ったのはいい思い出。

そんな超人気者だったテリーは1983年8月31日、膝の故障を理由に日本マットで引退試合。自分たちテリーファンは声を枯らし、涙を流しながら最後の最後まで全力で彼を応援したワケですが...

「フォーエバー! フォーエバー! サヨナラ!!」

大々的な引退シリーズを全国各地で行ったにも関わらず、なんとテリーは翌年にあっさりカムバック。これにカチンときたのは自分だけではなかったでしょう。

その後のテリーの試合をみても、オーバーアクションが鼻につくようになり、相手レスラーを応援するのもしばしば。自分も含め、かつての熱狂的なファンは姿を消し、テリーも全日本マットからフェイドアウトするようになりました...

しかし、テリー自身は、これ以降もアメリカマットで大活躍。次第に年齢を重ねていく自分も、若い時の黒か白かみたいな極端な考えはなくなり、それ相応にテリーのファイトを楽しむようになりました。

ちなみにテリーの凄さって何なのか。これはもうプロレスの上手さに尽きると思います。

テリーのファイトは相手を引き立たせる、まさに受けの美学。何年か前、アレックス・スミルノフ戦をYouTubeで観た時は、あの全日ではダメダメだったスミルノフにテリーは終始やられぱなし。しかし、最後は見事なローリング・クレイドルで仕留めきる、本当にフトコロ深いプロレス。

テリーの方がガタイいいのに、パワーが無いと言われる珍解説

とはいえ、昭和プロレスファン的には、テリーの実際の強さが体感できる試合も観たかった。全盛期にテリーと猪木がシングルマッチで組まれていたら、彼の本当の底力がみえたのかも。

あとテリーが、国民的人気マンガ「キン肉マン」のテリーマンのモデルというのは有名な話。ただ個人的にはこれには以前から違和感がありまして...

もちろんルックス、必殺技(テキサス・クローバー・ホールド等)はテリーをモデルにしていますが、その中身は正反対。

トンパチで陽気、時に破滅的な自由人テリーファンクに比べ、マジメで協調性が高く、いつも一歩引いたポジションのテリーマン。解説役が似合ってしまう、地味な正義超人とはまさに水と油。

しかし、改めてテリーの試合を振り返ると、いつも損な役回りを買って出るテリーマンは、リング上で決して己の強さを誇示しなかった、職人テリーファンクと相通じるものが合ったのかもしれません。

数多くのレスラーに影響を与えた、唯一無二の伝説(レジェンド)プロレスラー・テリーファンク。ご冥福をお祈りいたします。

さようならテリー。そして本当にありがとう!!

プロレスレジェンド度　100点

Sayonaraテリーファンク －テキサスブロンコよ永遠にー