本作は誰もが知る国民的アニメ、ルパン三世のスピンオフ作品となります。

自分が初めてルパンを初めて観たのが『TV第2シリーズ』。赤ジャケットのルパンですね。リアルタイムで第1話から欠かさず観ていました。

いま観直すと、正直かなりビミョーな作品ですが、当時はルパンたちの活躍に毎週、胸を躍らせたものでした。

それから『TV第1シリーズ』(緑ジャケットのルパン)を再放送で追いかけるようになり、劇場用映画、テレビスペシャル、OVAと時代が変わっても、ルパンを観続けてきました。

ただいつの時代も面白い作品だったわけではなく、駄菓子屋的な甘ったるい作風(キャラ設定、ストーリー)に付いていけず、半ば義務的な気持ちで観ていたことも多々ありました。

本来のルパンたちは悪党です。義賊でもお人よしグループでもありません。自分の欲望に忠実な、人殺しもためらわない危険な連中なのです。

そのハードな世界観は『TV第1シリーズ』、劇場映画第1作『ルパンVS複製人間』で感じることは出来ますが、多くの作品はルパンたちのドタバタ劇に終始する、観てもまったく頭に残らない、空虚なものだったと思います。

しかし、近年は本来のルパンたちの魅力を取り戻すような、エッジの効いた作品が増えてきた気がします。

そんな危険なルパンたちが活躍する「LUPIN THE IIIRDシリーズ」。本作はその第一作目にあたる『LUPIN THE IIIRD 次元大介の墓標』になります。

本作感想と共に、ルパンの相棒である、次元大介という男についても書いてみたいと思います。

(2014年公開　上映時間／51分　監督／小池健)

ストーリー

秘宝リトルコメットを盗むため、東ドロアに潜入するルパン三世と次元大介。二人は秘宝を強奪するも、その行先には必ず警察が待ち構えていた。

逃走するルパンと次元だが、死角から狙撃され負傷してしまう。

その後、二人は墓地で次元大介の名が記された墓石を発見する。殺す前にターゲットの墓を用意するという、凄腕の殺し屋・ヤエル奥崎の仕業であった。

ルパンと次元はヤエル奥崎のアジトを突き止めるのだが...

感想

本作は本来のルパンの世界、時間軸とは別物だと思います。いわゆるマルチバースです。

ルパンと次元のキャラデザインはもちろん、二人の立ち振る舞いや口調には凄みがあり、日テレ金曜ロードショーのファミリー向けルパンとはあきらかに一線を画しています。

時代設定は、1960年代後半から1970年代前半です。現実世界ではベトナム戦争が泥沼化し、007で言えば、第5作目の『007は二度死ぬ』から第9作目『黄金銃を持つ男』が公開されていた時代ということになります。

悪党ルパンには、こんなレトロな時代背景が非常にマッチしています。躍動する姿をみているだけでも、とても新鮮です!

ストーリーは『TV第1シリーズ』の名作「魔術師と呼ばれた男」を思わせる、ルパン・次元対殺し屋ヤエル奥崎のガチンコ対決。

この暗殺者は、スナイパー能力だけでなく、早撃ちも次元を上回る腕前の持ち主。しかも、二人の行動を先回り可能な特異能力を持つ、強キャラのヴィランです。

こんな強敵相手に二人がどうやって勝機を見出すのか。殺るか殺られるかの展開に、緊張感ある『ルパン三世』を存分に堪能することが出来ます。

またルパンと次元も、コンビを組んでそれほど時間が経っていないのか、完全な相棒というわけではありません。

次元はルパンを「ただのビジネス上のパートナー」と言うぐらいです。裏世界のプロ同士の緊張感を保っていて、そこがまた本作の魅力だと思います。

またラストには、ルパンファンなら誰もが知るあの大物が姿を現れます。これはかなり衝撃でした。

本作は大人が楽しめるハードボイルドなルパン作品です。シリーズが続いていくことを切に願います。

満足度　75点

次元大介について

次元大介は、個人的には唯一のルパン三世の相棒だと思っています。

五右衛門は仲間ですが、ルパンの相棒ではないでしょう。年がら年中、隣にいるような間柄ではありません。

次元は別です。二人は仕事がなくても、なんとなく一緒にいられる関係だと思います。そんな男は次元以外にあり得ません。

次元は一匹狼にみえますが、チームプレイが出来る男だと思います。

腕っぷしはもちろんですが、プロフェショナルに徹し、与えられた役割を全うできます。義理堅い男であるので、無口でも仲間の信頼は厚いでしょう。

ルパンはスタンドプレイに走ってしまう男だと思います。

自分の計画なら別でしょうが、誰かが立てた計画のチームメンバーなんて、ルパンにはガマンならないと思います。

自分ならこういうプランにする等と主張し、通らなければ勝手にプランを変更。チームプレーを度外視した行動を取るかもしれません。計画が成功しても、仲間から総スカンを食らうでしょう。

ルパンは天才過ぎるのです。しかも、己の欲望には忠実。ガマンということを知りません。

というより、自分を止めることはルパン自身にも出来ないのでしょう。どんなに大金を持っていても、命がけの何かをやり続けなければ生きていけない男。

そんな男と世界でただ一人、付き合うことが出来る男。

それが次元大介です。

普通なら手に負えない狂った天才を、彼は面白がってしまいます。

次元の器量ならば、もっと割のいい仕事は山のようにあるでしょう。巨大な犯罪組織をつくることさえ可能かもしれません。

しかし、次元にとっては「つまらねぇな、そんなこと」だと思うのです。

ムチャクチャなルパンの思いつきや、とんでもない計画だけが、次元を少年のようにワクワクさせてくれるのでしょう。

ルパンにしても、自分が認める能力を持ち、なおかつ信用まで出来る人間が、すぐ隣にいるなんて、奇跡だと思っているかもしれません。

とんでもないスペックを、自分の欲望に使おうとしない、ダンディズムの塊。

そして、天才犯罪者ルパンを相棒に出来る懐の深さと、裏社会も恐れる凄腕のガンマン。

男が惚れる男。

それが次元大介という男だと思います。

そして、そんな次元に魂を吹き込んでくれた小林清志さん。

次元大介がここまで魅力ある男になったのは、小林さんの声があったからに他ありません。

ご冥福をお心より祈り申し上げます。

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「あばよ、次元」 LUPIN THE IIIRD 次元大介の墓標

「あばよ、次元」　LUPIN THE IIIRD 次元大介の墓標