~5月14日 仕事風景~
「プロデューサー!!今日のレッスンはなんですか?」
事務所でデスクワークに励んでいた俺の傍で、挨拶代わりにかけられた一言。
一昨日、この事務所に入籍したばかりの粗島朱音だ。
今日も事務所の中で元気な声が響く。
「今日のレッスンは発声力レッスンだ。レコーディング室に移動しよう」
「はい!!あたし、頑張ります!!」
俺は立ち上がって、朱音と一緒にレコーディング室に向かった。
通路で今日のレッスン内容を細かく伝えると同時に、ふと思った事を口にした。
「そういえば、朱音はこの事務所のアイドルを知っているか?」
「えっと・・・・・まだ分かりません」
「まぁ、ここに3回しか来てないしな。この事務所に今は2人いるんだ。葉里緑根(はざとりょくね)と永見沙羅(ながみさら)だ」
「あ、時々テレビで見ます!!ここの事務所だったんですね!!」
「まだそんなに売れてないからそこまで映ることはないけどな。いつか挨拶しておくといいよ」
「はい!!あたしもがんばらなくちゃ!!」
朱音がやる気を出したところで、レコーディング室についた。
「じゃあ、この勢いで頑張ろうか」
「はい!!」
※
2時間ほどの発声力レッスンの後、朱音が小さいため息をついた。
「プロデューサー、あたし疲れました・・・・・」
今日はレッスンの時間は少ないものの、質の高いレッスンをしたため疲れたようだ。
「まぁ、明日は朱音初の持ち曲が入るからな。きついレッスンだったとは思うよ」
「そうですね!!明日が楽しみです!!」
やっぱり、朱音は元気なところが一番似合う。
そういうところが自然とアイドルの条件に合っている。
「それじゃあ、今日はこの辺かな・・・・・明日は午前9時に来てくれ」
俺が予定表を見ながら朱音に伝えていると、朱音が少し照れていた。
「あ、プロデューサー。ちょっといいですか?」
「ん?どうした?」
「この後、一緒に夜ご飯でも食べに行きませんか?」
「おぉ、いいね。じゃあ、支度してくるからちょっと待ってて」
「はい!!ありがとうございます!!」
常にコミュニケーションをとっておくのもプロデューサーの仕事の一つだからな。
俺は朱音をColofulプロダクションの前に待たせることにして、急いで事務室で支度をした。
「おや、そんなに急いでどうしたんだ?」
「あ、黒山プロデューサー。今から朱音と夜ご飯を食べに行くところなんです」
「そうか。担当アイドルとのコミュニケーションは大事だからな。・・・・・ところで、GHOOSTプロダクションって知ってるか?」
「?GHOSTプロ?聞いたこと無いですね」
「あぁ、それならいいんだが・・・・・」
俺は強張った表情の黒山プロデューサーを見て詳しく聞いてみることにした。
「それがどうしたんですか?」
「・・・・・新しく設立したプロダクションでな。そこのアイドルが新米ばかりはいわずもがな。なのに、今トップ並みの勢いがあるんだ」
「へぇ・・・・・それがどうしたんですか?」
黒山プロデューサーは軽くため息をついた。
「何をのん気な・・・・・俺達が危ういんだぞ?ここのプロダクションが潰れたら俺達の仕事場が無くなる」
「あっ!!そうか・・・・・まずいですね。俺達も何とかトップアイドルを育てていかないと」
「そうだな。俺達プロデューサーにできる事はそういうことくらいだ。お前も担当アイドルを頼んだぞ」
「任せてください!!・・・・・っと、朱音との約束を忘れていました」
「長話になってすまなかったな。行って来い」
「はい。行って来ます」
俺はColofulプロダクションの玄関へと早足で向かった。
「おーい。朱音!!」
「あ、プロデューサー!!」
俺は、朱音の元へと急いで駆けていく。
「悪いな。けっこう待たせちゃって・・・・・」
「いいえ、大丈夫です!!そこらへんの風景眺めてましたから」
「あぁ・・・・・まだここに来て3日だもんな。まだ新鮮味があるから大丈夫か」
「それじゃあプロデューサー、行きましょう!!」
「お、おい!!そんなに走るなよ!!」
俺は走っていく朱音を慌てて追いかけた。
・・・・・いつか、朱音をトップアイドルにする事ができるんだろうか。
無邪気に走っていく朱音を、追いかけながら思った。