「全体集合とか・・・・・体育じゃねぇだろ」
2時間目の体育終了後、黒坂君が着替えながら呟いていた。
ちなみに全体集合というのは、集団できれいに集まったり、同時に行動したりする面倒くさいやつだ。
簡単に言えば、「前へならえ」的なやつ。
僕も正直面倒くさかったので、黒坂君に同意する。
「確かにあれは面倒だったね。わざわざ前へならえとかを丁寧に練習するとは思わなかったよ」
「だよな。こんなことのために体育10時限分とるなんて・・・・・どうかしてるぜ!!」
某ブラックマヨネーズの片方さんのネタをパクリながらイライラしていた。
そんなこんなをしている間に着替え終わったので、教室へと戻り自分の席に座る。
「そうそう、棚木に聞きたいことがあったんだ」
「何?彼女いない歴はマイナス3ヶ月だけど?」
「なんか、斬新な彼女いるアピールされた!!・・・・・って、え、何!?彼女いるの!?」
「冗談だよ。僕に彼女がいるって分かったら黒坂君寝取るでしょ?」
「そんなに最低じゃないよ!!俺はそんなことしてまで彼女ほしくないよ!!」
「マジで?なんか、黒坂君のイメージ壊れちゃったなぁ・・・・・」
「うっわ、どんだけ最低に見られてるの・・・・・俺」
なんか、マジ凹みしてた。
とりあえず、次の授業の準備をしようとしていると。
「棚木君。この問題分かる?さっきの数学のやつなんだけど・・・・・」
突然、クラスメイトの一人に話しかけられた。
えっと、この人は・・・・・
「あぁ・・・・・分かりますよ。朱音さん」
このクラス・・・・・いや、学園一の美少女と評されている人だ。
まぁ、入学してまだ一ヶ月も経ってないのになぜ、こんなに有名なのかというと・・・・・
「あ、朱音さん!!今日はお仕事ないんですか!?」
黒坂君が妙に興奮しながら話しかける。
「うん。学校にはなるべく来たいから、休日とかに仕事してるの」
「さすがだなぁ・・・・・やっぱりアイドルは格が違うぜ」
そう。朱音さんは霧雨学園唯一のアイドルなのだ。
目立たない訳がない。
「あ、それでこの問題なんだけど・・・・・」
朱音さんが本題に戻し、数学の問題を見ようとすると。
「朱音さん!!俺が教えて差し上げますよ!!」
と、黒坂君が出しゃばった。
「え、黒坂君偏差値マイナス8-」
と言いかけたところで口を封じられた。
「本当!?じゃあ、これなんだけど・・・・・」
「どれどれ?」
黒坂君はしばらくその問題とにらめっこをしていた。
「・・・・・・・・・・因数分解して・・・・・・・・・マイナス4だから・・・・・・・・・・・え、なんでこうなった?」
僕は何も言わずに見ていたが・・・・・それ、因数分解必要無いし。
「黒坂君・・・・・?」
「・・・・・・すみません。分かりませんでした」
やっぱりこうなるか。
黒坂君は明日〇ジョーの最終回の如く、落ち込んでいた。
朱音さんは僕の方を見た。
「じゃあ、棚木君分かる?」
僕はさっき見ている間に解けたので、説明する事にした。
「あぁ、答えはルート5で、これをこうするから・・・・・」
「なるほど!!ありがとう、棚木君」
アイドルとしての笑顔ではなく、朱音さんとしての笑顔を僕に見せてくれた。
「いえ、仕事で忙しくて勉強が分からなかったら僕に聞いてください」
「うん、頼りになるよ!!さすが学級委員だね!!」
「まぁ、アイドルの朱音さんには負けるかもしれないけど」
僕は謙遜しながら言った。
しかし、朱音さんは僕の発言が気に入らなかったらしく、くいかかってきた。
「そんな事ないよ!!人には人の良さがあるんだから、勝ち負けなんてないんだよ」
僕はその言葉を聞いて、朱音さんはいい人だと理解した。
この人は分かっている。
見た目だけじゃなく、性格もできている。
「棚木君もあたしも黒坂君もみんな一緒なんだよ。同じ人間だもん」
「あぁ、そうだね。朱音さんの言うとおりだよ」
すると、チャイムが鳴り、3時間目の始まりを告げた。
「じゃあ、またね!!」
「うん」
そうして、国語の用意をしようとー
「いいなぁ・・・・・朱音さんとあんなに喋れて」
「あ、黒坂君いたんだ」
「隣の席だからね・・・・・くそぅ。勉強が出来ないからって・・・・・この仕打ちはねぇよ」
「自業自得でしょ」
「でも・・・・・そっか・・・・・・くくく」
「何?悪役みたいな笑い方して」
「いや、棚木に友達が一人増えてよかったなぁと思ってな」
「あ・・・・・」
そう。僕には友達と呼べる人がまだ黒坂君しかいなかった。
だけど、今日朱音さんが話しかけてきてくれたおかげで友達と言える人が一人増えた。
昔はこんなことなかった。
ずっと・・・・・一人だった。
「まぁ、お前がクラスに馴染めるのは時間の問題かもな」
「・・・・・そうだね」
友達と呼べる人が少なくても。
黒坂君という、優しい友達。
朱音さんという、人のことを理解している友達。
ここは、僕が一番落ち着ける場所だ。