amazonで注文していた本が届いた。

 

『kaze no tanbun 特別ではない一日』

 

17人の小説家や翻訳家、漫画家など様々な創作活動をしている人たちの

 

特別ではない一日を収録したアンソロジーである。

 

アンソロジー中、読んでみたかった「Yさんのこと」が収められていた。

 

この一文は第112回文學界新人賞を山内令南さんと同時受賞された

 

小説家の水原涼さんが書いたものである。

 

同時受賞した直後に亡くなったYさんについて、

 

作家としての複雑な心境が綴られていて興味深い。

 

この本の存在を知ったのは、今年の年賀状。

 

山内令南さんの著作権継承者のFさんから「年末に令南さんと同時受賞された

 

作家の方から 彼女のことを書いた本が送られてきました」と添え書きのある

 

年賀状が届いた。 私は興味をもったものの、直接、Fさんに問い合わせることは

 

しなかった。ところが、ここに来て、山内令南さんに呼ばれたのではないかと

 

思われることがいくつか身辺で発生したので、先日、思い切ってFさんに

 

電話を入れてみた。 「私、なんだか山内令南さんに呼ばれた気がするんです」

 

というと、Fさんも「私もそうなんですよ~」とのこと。

 

水原涼さんの「Yさんのこと」の中に、

 

「私が読んだYさんの作品は、受賞作と翌月に発表された第一作だけで、

 

複数つかい分けていたというた他の名義の作品や、没後有志によって

 

出版された作品集も手にとってはいない」というくだりがあった。

 

この没後有志によって出版された作品集というのが

 

2013年に、あざみエージェントから刊行した

 

山内令南作品集『夢の誕生日』である。

 

Fさんは、小説家にこの作品集を送るつもりだとおっしゃっていた。

 

「できればお墓参りもご一緒に、ってお誘いしてみようかな」とも。

 

私はこの作品集制作にあたって、Fさんに案内していただいて行った

 

山内令南さんのお墓のことを思った。

 

小さな慎ましやかな墓所にひっそりとあった山内さんのお墓。

 

ひっそりと、だが静かな意志で建っているような、まるで彼女そのものの

 

ようなお墓だった。

 

私は今、出版社の会員誌「あざみ通信」の編集にとりかかっている。

 

なぜか、次号には山内さんのことを書こうと決めていたので、

 

この本の存在はとてもタイムリーだ。

 

Fさんに託された、山内令南さんの未発表原稿。

 

闘病中に自室でノートに書き継いでいたもの、明らかに病床で書かれたもの。

 

カレンダーの裏に書かれた走り書きに近いものまで、様々な形や大きさの

 

紙媒体。 

 

衰弱して筆圧が弱く、どうしても読めない文字もある。

 

だが、辛抱強く、一篇一篇、解読していこうと思う。

 

解読ができたエッセイのひとつを、次のあざみ通信に掲載

 

しようと思っている。