突然の姉からの連絡。
『お父さんが「がん」になった。』
まだ何一つ親孝行していない。
ふと堺屋太一氏の言葉を思い出す。
「いつまでもあると思うな金と親。」
一週間後、大学病院で検査を受けた。
がん宣告されて時間が経っていたせいか、父、母共に少しは落ち着きが戻っていた。
父が検査をしている間、私は紀三井寺へ参拝した。
紀三井寺の本尊は十一面観世音菩薩。寺号は金剛宝寺であるが、紀三井寺の名前で知られている。西国三十三所第2番札所。
日本さくら名所100選にも選ばれている。
本堂へ向かう途中に見た芭蕉の詩が、詩心の無い私の心を刺す。
「見上ぐれば 桜しもうて 紀三井寺」
参拝の石段を上がって行くと途中の「松樹院」にある「身代り大師」前で、父にお守り代わりにと数珠を買った。
そして本堂でお祈りし病院に戻った。
病院に着くと両親と姉が会計待ちをしていた。
検査結果はまだ先とのこと。
私は買った数珠を渡せず帰路についた。