【新日本ファクトチェックセンター】
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最近は偏向報道関連の話が多かったが、今回は別の話。



■「0歳児に選挙権」の維新公約が話題?

維新・吉村共同代表が「0歳児に選挙権」を公約化するという話が結構話題になっている。

本件についてのネット上の世論は毀誉褒貶というか、「維新を猛烈に罵倒する」ような否定的な意見が多い、ように感じる。

翔子「元々、維新に対しては病的・盲目的にとにかく猛批判する『重度のアンチ』が(特にアッチ系に)多い印象ですしね」

ただ、主にネット上のそうしたアンチの批判を見ていると、どうもこの政策・テーマのごく基本的な部分すら「全くわかってない」人が、ただ思い込みや先入観で闇雲に維新案を猛批判して罵倒しているだけ、みたいなコメントもかなり多い印象で。

真琴「あらら」

この政策・テーマの基本的な部分について、マスコミ報道などを見ているだけでは「ほとんど理解できない」実情があるような気がするので、今回そのあたりを考察してみたい。



■【0歳からの選挙権】『ドメイン投票方式』はそもそもどういう政策なのか?

まず、「0歳からの選挙権」というのは、一般には『ドメイン投票方式(Demeny voting)』と呼ばれる投票方式である。

「選挙システムは、もっと若い世代の意見に敏感でなければならない」という思想に基づいて、若年層の選挙権の比重を重くする方向を目指す為の投票方式の一つ、と言える。


いわゆる「シルバー民主主義」に対抗し、もっと若い世代の意見を政治に反映しやすくするのが主目的の政策、ということ。

ポール・ドメインによって1986年に考案された投票方式であり、つまりもう30年近くも前からこの政策の基本概念が存在していた訳だ。

翔子「何故、これがシルバー民主主義への対抗策になるのでしょうか?」

以下記事を見てほしい。

0(ゼロ)歳選挙権を導入すべきか?

 


0歳~17歳人口:約2,000万人

有権者人口(投票率)/投票者人数〔2021年総選挙時〕
18・19歳:約300万人(43.21%)/約130万人
20歳代 :約1,200万人(36.50%)/約440万人
30歳代 :約1,500万人(47.12%)/約710万人
40歳代 :約1,600万人(55.56%)/約890万人
50歳代 :約1,500万人(62.96%)/約940万人
60歳代 :約1,700万人(71.43%)/約1,210万人
70代以上:約2,200万人(61.96%)/約1,360万人


2021年総選挙時の投票者数を見ても、日本は50歳代以上(シルバー層)の投票者数が圧倒的に多いのがわかるだろう。

今の日本は有権者人口自体が既に高齢者偏重な上、更に投票率も概ね高齢層の方が有意に高いので、こんな「高齢層に極度に偏った」投票実態になってしまっている。

そして「少しでも票を多くゲットしたい」各政党は、ボリュームゾーンである「シルバー層」に受けのいい政策ばかり重視する安易な方向に流れやすい、というのは利己主義的な動機からは「ある意味必然」であって。

真琴「だからどの政党も、シルバー層のご機嫌ばかり必死に伺っているのですねぇ」

うむ。ざっくり簡略化すれば、これが「シルバー民主主義」の実態である。



■「シルバー民主主義」の悪循環を止めて若い世代・現役世代の声を!

こうした「シルバー民主主義」の最大の弊害とは何か?

端的に言えば【高齢層ばかり優遇され、若い世代・現役世代が軽んじられる公金配分】になりがち、ということ。

たとえば医療費の窓口負担割合。
現行では、7歳~69歳は3割負担だが、70歳以上は2割負担、75歳以上は1割負担と「高齢者優遇」が顕著である(原則として。例外は有)。

翔子「日本の病院がいつも混雑していて、特に高齢者の姿が異様に多いのは、1割負担などと圧倒的に優遇されてて格安料金?だからという理由も大きいのでしょうねぇ」

医療費だけでなく年金、退職金、福祉などの世代間格差でも「高齢層ほど優遇」の傾向は多々見られる。

こうした過度?の「高齢層優遇」を是正しようと政治家が声を挙げると、シルバー世代有権者の猛反発を喰らうので、どの政党も尻込みし、提案が出てもすぐに叩き潰されてしまう傾向。


そして若い世代が軽んじられて苦しい生活に追い込まれ、子育ての余裕もなく少子化が加速し、結果更に若年層の有権者人口が減り、ますますシルバー民主主義が加速していく、という地獄の悪循環。


真琴「…これはかなり深刻な問題ではないでしょうか?」

まさにその通り。

そして、そうした「シルバー民主主義の悪循環を止める」ことを目的とした対策も、世界中で検討されている。

そうした対策案の内、選挙での投票方式として『余命別選挙』などと並び以前から「代表格」の一つとして挙げられているのがこの『ドメイン投票方式』なのである。

翔子「でも0歳児が自分の意思で投票なんてできないような?」

だからその分は保護者(親)が代行する。
「未成年の子の子育てをしている家庭」の大半は、18歳以上40歳代までの「若い世代・現役世代」であり、実質的には「彼らの持つ票の重み(票数)を増やす」のが主目的、と言ってもいいだろう。

もし「世代に応じて有権者の1票の重みに差をつける(50歳以上は1票1ポイント、50歳未満は1票2ポイント加算みたいな)」ことが実現可能なら、シンプルにそうするだけでもいいのだろう。

しかしその実現が事情(憲法や人権との兼ね合い等)により難しい場合に、「別の理論・アプローチ」でそうした実態をある程度達成・実現する為の次善の投票方式、と考えればいいかな。

真琴「なるほど。この政策の趣旨や目的は概ね理解しました」

概念自体は歴史のある政策であり、10年前に民主党(当時)の円よりこ元参議院議員がツイッターでこの『ドメイン投票方式』を訴えて話題になったことがあったが、当時もネットでは反対意見が多く出て、大きなうねりには全くならなかった。

円よりこ「赤ちゃんに選挙権を」にネットで物議

2014.08.15 J-CASTニュース

 




■イチャモンはいくらでもつけられるだろうが

この『ドメイン投票方式』は国際的にはそこそこ有名で、ドイツやハンガリーなどでも真面目に検討されたりはしていたが、「実現・導入」に至った国はまだ世界史上で存在しない。

何故なら、この政策にイチャモンをつけようと思えばいくらでもイチャモンをつけられる、みたいな部分があるので。

翔子「もし日本が導入したら世界初?」

もし「隙のない綺麗な論理でシルバー民主主義にガッツリ対抗」できる他の対策案が存在するのならば、確かにそっちの方がいいのだろう。でも、そんな「他の対策案」があるのだろうか?

少なくとも、維新以外の政党から、シルバー民主主義対策としてこれよりマシな「他の対策案」が提案された、という話をワイは聞いたことがない。


そういう意味で、維新が提言するこの『ドメイン投票方式』を、ワイは支持したいと考えている。

ネットでは批判の声も多い?ようだが、今の日本で「シルバー民主主義の悪循環を止める」政策はかなり重要度の高いテーマではないだろうか。


維新はこの政策だけでなく、前述の「医療費の窓口負担割合の高齢者優遇」も是正せよ、と公式に提言している。

当然、当のジジババ高齢層からは維新は猛反発を喰らって猛批判の声も大きい。
故に維新以外の政党はこうした政策には一様に尻込みしてかなり消極的な傾向は顕著である。

しかし、それにも怯まずに「ジジババ層に媚びずに若い世代を応援する」為の本気の提言を続ける維新の「勇気」を、ワイは高く評価したい。この勇敢な提言の流れを「出る杭は打たれる」的に止めたくはない。

真琴「その点で皆がジジババ層に迎合してひたすら維新叩きに夢中になっていても、日本が良くなる要素は全くないですからね」

尚、方式として『ドメイン投票方式』自体にはワイは別にこだわっていない。
「シルバー民主主義の悪循環を止める」有効な政策ならば、『余命別選挙』でも他の案でもいい。

この維新の提言をたたき台として、「もっといい案」が出てくるならば尚善き哉。

各政党が「ひたすら揚げ足取りと、自分達を棚に上げてのダブスタ他党批判」に邁進するのではなく、「こうした建設的な政策論議で切磋琢磨する」ような展開ならば、むしろ望むところである。

翔子「そんな展開を最近の日本で見たことはありませんが。大阪都構想の時もそうでしたが、維新が『出る杭』的な大胆且つ有用な提言をすると、立憲民主党ら左派系野党やマスコミが(こんな時だけ)自民党とグルになって全力で維新叩きに夢中になるような流ればかりで」



■一部の的外れな批判に対して

この維新の『ドメイン投票方式』の提言に対して、「維新が最近突然出してきた、思い付きだけの衝動的な大アホ案www」みたいな一部の的外れな批判もあるようだが。

この『ドメイン投票方式』は、2年前の2022年時点で、既に維新八策として公式に含まれていた提言である。


維新八策2022

 


この中の1丁目1番地、「1.《新しい政治行政》【政治改革・国会改革】」の中の「選挙制度改革」に、以下提言がある。


【66 投票率の低下や人口動態により、特定世代の影響力が顕著に弱まる現行選挙のあり方を聖域なく議論し、子どもに投票権を与えて親がその投票を代行する「ドメイン投票方式」等の導入を検討します。】

それどころかこの吉村氏は2016年の時点でも既に、この「0歳選挙権」に言及している。今から8年も前である。

こうした「客観的事実」から見ても、少なくとも「吉村氏の衝動的な突然の思い付き」などでは全くなく、むしろ正反対の「彼らが長年検討してきた重要政策」の部類に入ると言えるだろう。