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さて、米国中間選挙だが、情勢はやはり「米国民主党の敗北」が濃厚な
傾向は今も変わらない模様。残念ながら。

真琴「うーん。トランプはそんなに米国民に支持されているのですかね?」

そのへんは正直、わりと謎だ。

少なくとも「妊娠中絶問題」のテーマなどでは、米国の普通の女性にとっては
「今回だけは絶対に民主党に投票しないと!」と考える人の方が圧倒的に多い…
みたいな展開になっても不思議ではないくらいの話とも思える。

のだが、実際はそうはなっていない模様で。

ま、無関係な立場の部外者の我々が「何故?」と疑問に思っても詮無きことで、
当事者にはまた別の切実な事情や要素があるのかもしれん。

翔子「まだ私達が把握していない別のファクターがあるのでしょうか?」

うむ。今回はそのへんに関連した話になるかもしれん。

前回記事(その14)で、米国中間選挙の主要争点3つのうち、「妊娠中絶問題」
について考察した。

今回はその続きである。

真琴「では残り2つの争点についての考察ですか?」

いや、重要度という点で優先順位を考え、今回は「外国勢力による情報工作」
について考察したい。

翔子「というと、スパイ活動みたいな話でしょうか?」

うむ。中国やロシアなどの外国勢力(スパイ的な組織)が、今回の
米国中間選挙においても暗躍して情報工作をしている、という問題である。

真琴「そんな陰謀論?みたいな話、映画や小説ではあるまいし、本当にあるのでしょうか?」

事実として、2016年の米国大統領選挙ではロシアが世論工作・選挙干渉を
行っていた。ロシアによる選挙介入はトランプですら認めている事実。

尚、そうした「ロシアによるスパイ工作についてトランプが共謀していた」
という指摘は証拠が確認されておらず、トランプも共謀は否定している。

つまり「共謀については憶測のレベルでしかないが、ロシアによる工作活動
自体は既に全米で公式に事実だと認定済」の話だと言える。

そしてロシアが推していた(情報工作で支援していた)トランプが、現実に
2016年大統領選で勝利して米国大統領に就任したのは周知の通り。

真琴「当時はその選挙結果に『まさか!』と驚きましたよ ><」

翔子「そう考えると、これは実は深刻な問題ですね…」

外国勢力による情報工作(スパイ工作)というのは、決して映画や小説の中
だけの妄想ではなく、れっきとした現実、「今そこにある危機」だということ。



■中国側グループによる情報工作

今回の外国勢力による情報工作について、具体的に見てみると。

フェイスブック運営のメタ、中国とロシア発の情報工作を排除
2022年9月28日 CNN

 

 


「米中間選挙を狙う親中派のSNSネットワーク、フェイクニュースを大量に作成・流布」
2022年10月27日 朝鮮日報

 

 



他にも関連記事は多数見つかる。
中国側グループによる情報工作は以前から執拗に行なわれていた模様。


親中派ネットワーク、西側のレアアース採掘企業を攻撃 報告書
2022年6月29日 AFP通信

 

 



中国 APT41 動きを捕捉:米国州政府のネットワークをゼロデイ脆弱性で狙っている
2022年3月8日

 

 



上記記事でも言及された「APT41」という組織は
「中国国家安全部(MSS)のためのスパイ活動」やサイバー犯罪で
米司法省から20年に起訴されている。

これだけ根拠が揃っている以上、「中国側グループによる欧米(特に米国)
への情報工作」は、妄想や陰謀論などではなく「事実」だと言えるだろう。



■中国側グループによる中間選挙への情報工作の目的は何か?

「中国サイドによる情報工作は事実」として、その目的は何だろうか?

かなりのコストや労力を掛けて執拗に工作を続けている以上、
「ただの愉快犯」と考えるのは無理がある訳で。

真琴「それはそうですよね」

ま、彼らの情報工作の中には「金目当てのハッキング」なども一部含まれて
はいる。
しかし基本的には「中国にとって有利な方向への世論操作・誘導」を目的
とした情報工作だと考えられる。


では、今度の米国中間選挙に対する中国側グループの情報工作は、
どちらの勢力(政党)を勝たせたいという意図による物だろうか?

翔子「中国系米国人は、以前は主に民主党支持の傾向でしたよね? だったら、民主党を勝たせようとする世論操作工作?」

確かに中国系米国人は、以前(胡錦濤の時代迄)は民主党支持が大半だった。
しかし今はそうでもない感じで。

今回の中間選挙については、中国サイドは主にはむしろ「共和党を勝たせよう」
という意図で情報工作をしている、とワイは推測している。

真琴「その根拠は何でしょうか?」

ざっくり言えば以下の4点あたりである。

①中国サイドは対中強硬派筆頭格のペロシを猛烈に目の敵にしている
②ウクライナ支援・台湾支援についてもバイデン政権の方が共和党よりも積極的である
③中国側グループは米国内でのレアアース増産を目指すバイデン政権を批判する工作活動をしていた
④中国共産党は同性愛に対して否定的である

順番に見ていこう。



■①ナンシー・ペロシを猛烈に敵視する中国

ナンシー・ペロシは米国リベラル派の最有力議員の一人で、今は「下院議長」
を務めている。

米国下院議長というのは「全米第3位」のポジションであり、
大統領権限継承順位についても副大統領に継ぐ第2位。

つまり、もし米国大統領と副大統領に揃って「有事」が発生して
職務を遂行できなくなった場合は、ペロシ氏が大統領(代行)として
大統領権限を継承する立場にある。

翔子「そのケースでは実質、米国初の女性大統領になるのですか?」

そんな感じやな。

真琴「つまりペロシ氏は超偉い女性政治家なのですね」

で、そのペロシ氏は人権問題を重視しており、人権問題等で度々
中国を猛批判してきた、対中強硬派筆頭格でもある。

いわゆる天安門事件の時には、その2年後に天安門広場に自ら赴き
「中国の民主主義のために犠牲となった人たちへ」と書いた横断幕を
掲げて中国共産党への抗議を示したくらいで。

翔子「…それ、かなり危険のある命懸けの行動ですよね」

更に今年の8月には、中国からの再三の脅迫にも屈せず、
「米国の現職下院議長」として台湾を訪問した。

真琴「ニュースで話題になってましたね」

翔子「ペロシ氏は本当に筋金入りのリベラルなんですねぇ」

そして下院議長として米国民主党内でも強い影響力を持っており、
今のバイデン政権が中国に対して比較的強硬な姿勢なのも、
ペロシを中心とする党内リベラル派の影響が強いと言われている。

つまり中国共産党側からすれば、ペロシ氏は「不倶戴天の敵」であり、
中共支持の中国人からのヘイトを最も集めている米国人なのは間違いない。

真琴「台湾訪問の件ではペロシに激しく面子を潰された、という思いも中国側には強いでしょうね」

そして、下院は中間選挙でも「全議席改選」であり、選挙後に
下院議長は下院議員内の投票で選び直されることになる。

これまでは下院も民主党が多数派だったので下院議長のポストも民主党が
押さえていたが、もし今度の中間選挙で共和党が下院の多数派を占める事に
なれば、下院議長のポストも共和党の物になる訳で。

中国共産党としては、米国の政策決定におけるペロシ氏の影響力を極力
削ぎ落としたい(立場を弱くしたい)、と考えているはずで、
その為には今度の中間選挙で(特に下院で)共和党が勝利する方が
都合がいい(それで下院議長の座からペロシを引きずり降ろせる)、
と考えているだろう。

この点についてのワイの推論は以上である。

翔子「なるほど。理解しました」



■②ウクライナ支援について

ウクライナに対する武器弾薬等の支援についても、バイデン政権は共和党より
顕著に積極的で、「ウクライナを見捨てない!」という強いメッセージを
世界に対し発し続けている。台湾についても同様である。

これをやめさせたいと強く考えているのはロシア側であるが、中国も基本的
には同じ考えだろう。ロシアが負けて弱体化する展開など望んではいまい。

そうである以上、この点についても中間選挙で共和党が大勝して、バイデン
政権がレームダック化してウクライナ支援が滞るような展開の方が、
中国共産党の利益になる、と推定される。台湾問題については尚の事そうで。

真琴「なんとなく共和党の方が戦争好きで、民主党の方が武器等の支援には消極的なイメージがありましたが、そうではないんですね」

そうした一面も、一切ないということでは無論ない。

ただ、米国の(欧米の)リベラルというのは、日本の護憲派(9条信者)
などの似非リベラルなどとは根源的な部分で「全くの別物」であって。

朝鮮戦争もベトナム戦争も、開戦は米国民主党政権の時だった。

中国、北朝鮮、ロシアなどの独裁者による非道な人権侵害や不当な侵略行為
に対しては、保守派以上に「断固として屈服せずに戦う!」という強い
意志と姿勢に共感を示すのが「本来の(欧米の)リベラル派」だと言える。


これはウクライナを含む、欧州で平和を望む人達の主流の考え方でも
あるだろう。

ウクライナの平和実現、ロシアを「追い出すこと」が必要 エストニア首相

 

 



翔子「平和というのは『ただ口先で連呼していれば手に入る』ような物ではなく、不当な侵略に対しては『武器を手に取って戦ってでも全力で守り抜かねばならない物』だと」

うむ。それが国際的には常識と言える、平和維持の基本の考え方である。




■③米国内でのレアアース増産を目指すバイデン政権

中国は世界市場でのレアアースの支配的地位の維持を狙っているが、
バイデン政権は米国内でのレアアース増産を目指して動いている。

この動きは中国共産党にとって目障りなはずで、実際にこの点についての中国
サイドの工作活動などが報告されている。

 

 





■④中国共産党は同性愛に対してかなり否定的である

海外の映画の同性愛シーンや台詞などに対し、中国国内での公開時に
中国政府が検閲してそうしたシーンが削除や修正などを受けた点は
比較的知られているだろう。


検閲対象となった内で有名な映画やミュージックビデオとしては、
「ボヘミアン・ラプソディ」「ブレイク・フリー (自由への旅立ち)」
「バズ・ライトイヤー」など。

同性愛の部分は修正かカット 映画「ボヘミアン・ラプソディ」が中国で公開

 

 


「社会の暗黒面」呼ばわり 中国、同性愛ドラマ放送禁止にファン・権利団体から批判殺到

 

 


中国のSNSでLGBTQ団体のアカウントが閉鎖された件に政府が関与していたことが明らかに

 

 



中国は習近平体制になってからこうした検閲傾向が強まっている。

そして米国では共和党よりも米国民主党の方が「同性愛の権利擁護」の
傾向が強いのは周知の事実であって。

人権問題やら同性愛やらで中国や北朝鮮を痛烈に厳しく糾弾しているのは、
米国では「リベラル派」である米国民主党の側なので、この点でも
中国共産党は民主党を目障りに感じているであろうことは容易に推定できる。


翔子「こうして見ると、確かに今のバイデン政権と中国の習近平政権は、敵対する要素が多いですね」

米国在住でないワイには、「実際のところどうなのか?」という皮膚感覚
はわからないが、一つの仮説としては「今回も2016年大統領選と同様、
ロシアや中国の(自主的な)工作によって共和党有利な選挙情勢になっている」
という可能性はあり得るのかもしれん。



■外国勢力による情報工作の被害者は米国だけなのか?

真琴「中国等による執拗な情報工作・スパイ工作の被害を受けるなんて、米国は色々と大変なんですねぇ」

…まるで他人事みたいな言い方だな。

翔子「違うんですか?」

「スパイ防止法」的な法令が海外では常識のように当然視されているが、
日本にはそうした法令がほぼ存在せず、今も公然と「スパイ天国」と
呼ばれているのは周知の事実。

米の巨大SNSで工作疑惑 「スパイ天国」日本でも対策急務 企業、大学、研究所…〝多国籍化〟で社員として潜入、法律なく摘発は困難

 

 


つまり敵対的な国から見ると、今までの日本は「各種スパイ活動・情報工作活動
を行うことのリスクが低い」チョロい国であるのは自明の理であって。

たとえば北朝鮮による各種の邪悪な工作活動・スパイ活動は君らも
ある程度は知っているだろう。

真琴「いわゆる拉致問題も、北朝鮮の工作活動の一環としての日本人拉致、に関する問題ですよね」

うむ。
国力や技術力が中国より遥かに劣る北朝鮮ですら、昔から日本において
各種スパイ活動・情報工作活動による邪悪な策謀をし続けてきたのは事実。

なのに「中国は日本ではそうしたスパイ活動・情報工作活動をしていない」
などと、君らは思うのかい?

翔子「思いません」

真琴「確かにそうですよね」



■日本における、中国等外国勢力による情報工作

こうした問題については、実は西側諸国の公的機関による報告などが
客観的な視点で冷静な分析・調査をしていて、大変参考になる。


たとえば米国の公的機関。

沖縄で中国の工作員は暗躍しているのか?

 

 


この記事では「米中経済安保調査委員会」という米国の公的機関の
年次報告書について言及している。

中国側工作員が沖縄の反基地活動や沖縄独立運動を支援していたり、
日米同盟分断をはかる扇動者を抱えたり、といった中国側による日本での
諜報活動や工作活動について赤裸々に率直に報告されている。

「沖縄独立運動の支援」のみならず、「中国側の沖縄領有権の主張」
についてまできっちり指摘されている。

中国の沖縄での秘密工作とは その5 沖縄独立を煽る

 

 


真琴「つまり、中国は尖閣諸島だけでなく沖縄をも侵略して支配下におこうとする野望を抱いている、と」

中国側の主張によれば「それは断じて侵略ではない。沖縄(琉球)は
本来中国の領土であり今は日本が不法占拠しているだけ!」ということに
なるのだろうがね。

翔子「中国が武力侵攻して沖縄を支配下におく上では、自衛隊や在日米軍は非常に邪魔な存在だから、あんなに必死に米軍らを敵視している訳だと」

 

実際、反基地活動家サイドは米軍や自衛隊を異常なまでに敵視している。

それは客観的事実である。

それも、もはや盲目的を超えて狂信的と言っていい「絶対敵視」の水準で。

 

自衛隊強行配備に反対 沖縄南西諸島 デニー氏、政策に明記
2022年8月18日しんぶん赤旗

 

 



生姜教授「馬鹿げた妄言だ!そんな非現実的なネトウヨの陰謀論みたいな報告は論じるに値しない!」

(無視して)リンク先の日本の公安調査庁のレポートなどでも
沖縄独立運動関係者と中国側の密接な関係について言及されている。


また、フランスの公的機関からも同種の報告が正式に挙がっている。

フランス国防省、日本のヤバさを解説した650ページの研究結果を公開 「沖縄独立・憲法九条・基地反対の扇動は中国の工作員」

 

 


日本の弱体化狙い「沖縄などで独立運動をあおっている」 仏軍事研究所「中国の影響力」報告書

 

 



これらはフランス国防省傘下のシンクタンク・軍事学校戦略研究所(IRSEM)が
発表した報告書「中国の影響力作戦」についての記事である。

中国が潜在的な敵(=日本)の弱体化を狙い「沖縄独立運動を煽っている」
「憲法9条改正への反対運動」「米軍基地への抗議運動」を支援している、
といった客観的事実が、こうした報告にきっちり記載されている。


真琴「薄々、そうだとは思っていましたが、やっぱりそういうことなんですね」

翔子「日本から遠く離れた米仏の公的機関の方が、日本の酷く偏ったマスメディアや自称有識者などよりもよほど『日本の反基地活動家や護憲派の正体』を正確に看破しているなんて」


実際、凡そ普通の日本人や沖縄県民の意識からはかけ離れた、以下のような
驚愕の記事を平然と書くようなトンデモメディアが沖縄には実在する。


【島人の目】苦難覚悟で沖縄独立も
2019年3月31日 琉球新報

 

 

>もはや島はさらなる苦難を覚悟で独立を志向したほうがいいのかもしれない。その場合、沖縄が味方に付けるべき相手は中国、ロシア、北朝鮮のうちの1国。または3国全て。


真琴「また琉球新報か…。本当に沖縄の反基地マフィア達は最悪ですね」

翔子「日本政府や米軍を全力で敵視してデマをでっち上げて陰謀で不当に貶めるくらいは平気で行い、一方で『北朝鮮らを味方に付けるべき』、だとか、もはや琉球新報等は実質、沖縄県民の味方などではなく、実質は『中国や北朝鮮サイドの味方』的な要素が多々あるのですね」

 

かなり残念な事実ではあるが、その現実を直視する必要があるだろうな。