【新日本ファクトチェックセンター】

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前回記事(その13)で「ペロシ氏夫殴打事件」関連について書いた。

この問題については、米国民主党サイドが現状、少々攻撃的に
なり過ぎているような印象を受ける。

ヒラリー氏が「男は共和党が拡散する『嫌悪と倒錯の陰謀論』に誘発された」
などと(動機の詳細などが明らかになる前の時点で)前のめり気味のツイート
をしたり、民主党寄りのメディアらが一斉にマスク氏を総攻撃したり。

翔子「確かに、やや『決めつけ型』の攻撃的な姿勢でしたね」

で、何故そんなに攻撃的になっているのかというと、米国は現在、
中間選挙を間近に控えている、という事情が大きいだろう。

やや劣勢と伝えられている米国民主党サイドはピリピリしたムードに見える。

真琴「米国中間選挙の投開票日はいつなんですか?」

11月8日。あと一週間やな。

翔子「ホントにもうすぐなんですね」

米国の政局の変化は、日本にとっても(世界にとっても)結構影響が大きい
話なので、今回はタイムリーなテーマとして、2022米国中間選挙について
考察してみたい。



■今度の中間選挙における主要な争点は何か?

ワイが見る限り、今度の中間選挙における主要な争点は
「妊娠中絶問題」「物価高問題」「移民政策」の3つだろう。

「ウクライナ支援を今後どうするか?」というのも大問題ではあるのだが、
普通の米国民にとっては上記3つほどの関心事ではないように見える。

なので上記3つを主要争点と仮定して、考察したい。



■妊娠中絶問題

真琴「何故今、米国でこのテーマが争点になっているのでしょうか?」

まず、米国ではプロライフ(中絶反対派)とプロチョイス(中絶賛成派)
の2つの思想が長年激しく対立していた。

そして1973年の連邦最高裁の「ロー対ウェイド判決」により、
「人工妊娠中絶は女性の権利」として認められる形となった。

以降は全米で「人工妊娠中絶は女性の権利」として実質保障されている
ような状態であった訳だ。

翔子「流石に人権意識の高い先進国のアメリカですね」

ところが今年の6月、米国連邦最高裁はこの「ロー対ウェイド判決」を
覆してしまう。こうなると、「中絶が合法か否か?」は米国の各州が
州法で独自に定めることが可能になる訳だ。

そして早速、複数の州が「中絶禁止」の州法を今年成立させていて、

その動きは更に広がりつつあって。

真琴「どういうことなの…」

かくして、実に50年ぶりに「妊娠中絶問題」が非常にホットなテーマとして
全米を大きく揺るがしているのが、今の米国の状況になっている。

そしてこの中間選挙でも当然のように主要争点の一つになっている訳だ。

翔子「そんな経緯があったのですね」



■妊娠中絶問題についての両陣営のスタンス

このテーマについての両陣営のスタンスは知っているかい?

真琴「共和党はプロライフ、米国民主党はプロチョイス、ですよね?」

うむ。基本的にはその認識で間違ってない。

特に米国民主党の女性政治家達は概ね、妊娠中絶問題を「最大のテーマ」
として訴えて中間選挙で女性票を取り込もうと、精力的に動いている。

翔子「当然そうなりますよね」

そして夏頃迄は、その動きで民主党の支持は実際伸びていた模様。

日本のマスメディアの報道なんかでも、概ね上記の流れで解説されている
ケースが多いと思う。

ただ、実はそう単純な構図でもないのが米国の実態で。

米国でのキリスト教が大きく「プロテスタント」と「カトリック」に分類
されるのは知っていると思う。

真琴「カトリックの方が保守的なスタイルですよね」

基本はそうだ。そして、カトリックは元々「中絶禁止」のスタンスであって。
それに比べればプロテスタントは比較的中絶容認寄りで。

翔子「すると、カトリックは共和党支持、プロテスタントは民主党支持なのですか?」

ところがそうとも言い切れなくて。

米国でカトリック信徒として大統領指名候補になった者はこれまで4名いるが、
いずれも民主党の指名候補だった(バイデンが4人目)。

そのうち、実際に米国大統領になったのは1960年のケネディと、今の
バイデンの2名。つまりバイデンはカトリックの大統領なのである。

真琴「じゃあバイデンは民主党なのにプロライフ支持なのですか?」

いんや。バイデンは「プロチョイスでカトリック」というスタンスの人。

というか今の米国民主党でプロライフ支持の政治家というのはほぼ
「存在自体が許されない」レベルなので、これは当然と言える。

とはいえ、今の米国は地味にカトリック信者も増えていて。

翔子「え? そんなイメージはあまりないのですけど」

まあ、ヒスパニック系なんかがわりとカトリックだったりする模様。
そして、カトリックの主流派は今も「プロライフ」のスタンスな訳で。

つまりバイデンとしては「希少なカトリック系大統領」としてカトリック票
を取り込みたいが、その状況で「プロチョイス」として中絶賛成を強く訴える
とカトリック票が逃げかねない、というジレンマを抱えている訳だ。

真琴「バイデン氏は踏み絵を迫られている状況だ、と」

うむ。
なのでバイデン自身は妊娠中絶問題をあまり声高に訴えてはいない。
はっきり言えば「煮え切らない感じ」で、バイデン自身は別のテーマを
争点にしたがってるような印象は否めないな。

翔子「こういうテーマで中途半端なスタンスなのはあまり得策ではないと思うのですが」

ま、バイデンに非があるというより「民主党にとってタイミングが悪かった」
という感じやな。

こんな「妊娠中絶問題が久しぶりに大注目を集めている」という50年ぶり
のタイミングで、民主党は史上でも希少なカトリックの大統領(バイデン)を
リーダーにしていた、というのは時期的には不運かもしれん。

尚、プロテスタントも福音派などはガチガチのプロライフの思想であり、
ガッツリ共和党支持だったりする。

米国内でも様々なグループが、2つの政党のどちらを支持すべきか?で
大きく揺れ動いてきたのが実態だろう。

真琴「複雑な構図なんですねぇ」



■妊娠中絶問題でどちらを支持するか

翔子「センター長は、このテーマでどちらの政党を支持しているのです?」

日本人の感覚からすると、米国で「妊娠中絶問題」がこれほどの大論争、
大問題になっているのは、正直「ピンと来ない」部分はある。

「プロライフ」「プロチョイス」どちらの主張も倫理的に見れば
「それなりに筋が通っている」部分はある。

真琴「プロライフの思想にも共感しているのですか?」

プロチョイスの主張は基本的に「どんな状況でも中絶は女性の自己決定
だけで完全に自由に行えるべき」という物で。

それに対して「胎児の命をあまりにも軽視し過ぎでは?」という
異議としてのプロライフの思想には、一定の説得力はあろう。

母親の人権と胎児の命、どちらを尊重するか?みたいな話と考えれば、
本来は「一概にどちらが一方的に正しいとは言えない」テーマかも。


ただ、今の米国の州法では、強姦などのケースですら中絶を問答無用で
一律禁止するような、極端なルールも少なくない。そこまで行くと
「女性の人権を無視し過ぎて到底支持できない」とワイは考える。

なので、このテーマについてはワイは「米国民主党支持」である。

もしこの中間選挙で米国民主党が大敗するようだと、人権という観点から
米国はあまり良くない分断状況に陥る可能性が高いかもしれん。

そういう意味で、この中間選挙もワイは一応、米国民主党を応援する
スタンスである。

翔子「前回記事では民主党サイドの言論統制を批判していたのに?」

ま、元より「0か100か」という一方的な政党支持ではない訳で。

表現の自由や言論統制問題を重視するワイは、最近の民主党サイドの
傲慢な言論統制体質には強い不満を持っているし大いに危惧もしている。

真琴「特に民主党支持のマスコミ(CNNら)による極端な姿勢ですね」


イーロン・マスク氏がその点をやはり危惧しているのも当然だと考える。


さりとて、「ではトランプ再選を望むのか?」と言えばNOであって。

外交面でも「ウクライナや台湾を見捨てない!」というメッセージを世界に
強く発信している今の民主党政権(バイデン&ペロシ)の方針が当面
堅持されるような展開の方が、国際平和維持という観点からも望ましいだろう。

言論統制体質については「本来のリベラル派の原点に立ち返ってくれ」
としか言いようがない。


長くなったので今回はここまで。続きはいずれ書くつもりではあるが…

真琴「予定は未定ですねぇ」