【新日本ファクトチェックセンター】

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今回は以下の件について考察したい。

「陰謀論」早くもTwitterで拡散 買収劇のイーロン・マスク氏、数時間後に削除 ペロシ下院議長宅襲撃事件めぐり
東京新聞 2022年10月31日

 

 

>クリントン元国務長官が29日、男は共和党が拡散する「嫌悪と倒錯の陰謀論」に誘発されたとツイートした。これに対しマスク氏は30日、事件には裏事情が隠されている「わずかな可能性がある」と返信。酒に酔ったポール氏と男娼とのけんかだとする記事のリンクも投稿した。



■概要を整理

翔子「米国の案件ですね」

うむ。
まず、本件の登場人物を整理したい。

ナンシー・ペロシ:米国下院議長(米国民主党)
ポール・ペロシ:ナンシーの夫、襲撃の被害者? サンフランシスコ在住
デビッド・デパペ容疑者:襲撃の加害者?
ヒラリー・クリントン:米国民主党の政治家
イーロン・マスク:米国の実業家


まず「ペロシ氏夫殴打事件」なる事件があった。

真琴「事件の内容詳細についてはググって下さい」

デビッド・デパペ容疑者がポール・ペロシ氏をハンマーで殴って怪我させた。
「概ね確定している」と言える事実は、現状ほぼこれだけ。

容疑者の詳しい動機はまだ不明で、現段階で憶測をもとに安易に動機や
ストーリーを断定すべきではないだろう。

この事件に対し、ヒラリー氏とマスク氏がツイートでやり取りをする。

①「男は共和党が拡散する『嫌悪と倒錯の陰謀論』に誘発された」
とするヒラリー氏のツイート

②「事件には裏事情が隠されている『わずかな可能性がある』」
とするマスク氏のツイート(異説のリンク付き)


で、この②のマスク氏のツイートについて猛烈な非難が殺到し、マスク氏は
②のツイートを削除した。謝罪や訂正は現時点ではしていない模様。

翔子「削除に追い込まれはしたが、謝罪や訂正は拒否している、と」



■何を根拠に「フェイクニュース」「根拠のない陰謀論」だと断定しているのか

CNNやニューズウィーク等、米国民主党寄りのメディアは、本件で
マスク氏がリンクで紹介した異論のサイトをごぞって「フェイクニュース」
「根拠のない陰謀論」「虚偽情報」「事実無根」だと断定している。

真琴「ブルームバーグもそうですね」

しかし、「その異論がフェイクニュースである」という点の論理的な説明や
根拠は、何処を探してもワイには見つけられなかった。

「そのサイトは過去にこんなフェイクニュースを流したこともある」
と言ってるだけ。


もし「過去にフェイクニュースを流したことのある情報源(サイト)だから」
という理由だけで「今度のそのサイトのニュースもフェイクニュースに
決まっている!」みたいな「トンデモ理論」が成立するのであれば。

たとえば朝日新聞は過去に幾度となくフェイクニュースを垂れ流していた
フェイクニュースの常習犯的なメディアである。
有名なのは以下とか。

サンゴ事件だけじゃない 朝日新聞の誤報・虚報歴代ベスト5

 

 


それを理由に「朝日新聞の書いたニュースはフェイクニュースに決まっている」
と断定できてしまうことになる。

というか「大手メディアで過去に一度もフェイクニュースを流したことがない」
所の方が珍しいだろう(朝日ほどではないにしても)。


そんな「トンデモ理論」を振りかざして一方的に「虚偽情報」と決めつける
(レッテルを貼る)ようなやり方を、ワイは支持できない。

「虚偽情報」だと言うのならば、「何故虚偽情報なのか?」という点の根拠を
論理的に提示し説明すべきだろう(トンデモ理論ではなく)。

たとえばワイはこのブログの「その1」で、何故あの東京新聞記事が

フェイクニュースなのか?という点の根拠を論理的に提示した上で

虚偽情報だと断定している。

 

翔子「東京新聞だから、朝日新聞だから虚偽情報に決まっている、みたいな雑なレッテル貼り・思考停止はしていない、と」

 

うむ。



■ヒラリー氏のツイートは「根拠のない陰謀論」ではないのか?

一方、①のヒラリー氏のツイートを見てみると。
「男は共和党が拡散する『嫌悪と倒錯の陰謀論』に誘発された」と
彼女はつぶやいている。
しかし彼女の主張が真実であるという点の「確かな根拠」は何も提示
されていない。

容疑者の動機は未だ不明であり、事件の真相は明らかになっていない。
そもそも容疑者は近年は左翼的な主張をより支持していた人物の模様で。

WSJ

 

 

>ここ数年間は左翼的な主張をより支持する姿勢も見せていて


米国民主党の政治家であるヒラリー氏としては「この事件は共和党のせい」
ということにしておきたい、という立場なのは明白であり、
①のツイートは「ポジショントーク」の要素も強い、と見るべきだろう。



■マスク氏がリンクした「異論」はどのような物であったのか?

直接のリンク先は追えなかったが、日本語のまとめサイトで関連情報
を載せた記事はある。


ペロシ夫を襲った男は下着姿だった。警察が来た時ペロシ夫と容疑者以外の第3の男がいた。ペロシ夫は容疑者を「友人」と呼んだ

 

 

 

 


おそらく、上記まとめ記事で引用されているツイートの主は、共和党寄りの
人が多く、「この事件は共和党のせいではない」ということにしておきたい、
という「ポジショントーク」的要素が含まれている可能性は高いだろう。
内容が事実だと確認できる前に安易に鵜呑みにすべきではない。


それはワイも認識した上で、それでも興味深い情報が多々提示されているのは
事実。音声データや画像で根拠も示されているので、「満更嘘でもない」
という可能性はそれなりにあるのかもしれん。

画像等を見る限り、確かにLGBTQの旗やBLMの看板など、容疑者が
住んでいた住居は「リベラル派」の活動拠点のように見える。

WSJ記事でも書かれていた通り、「容疑者はここ数年間は左翼的な主張を
より支持していた」というのは、結構的を射た指摘かもしれん。

この容疑者を、ヒラリー氏が言うような「右翼の陰謀論者」と現段階で
安易に決めつけるのは妥当ではないように思える。


「警察が来た時ペロシ夫と容疑者以外の第3の男がいた」
「ポール氏(ペロシ夫)を襲った男は下着姿だった」
という指摘も、もしそれが事実であればかなり興味深い情報である。

翔子「もう米国も下着姿ではかなり肌寒い時期ですよね」

被害者?であるポール氏ならまだしも、加害者?であるデビッド氏が
事件当時、下着姿になっていた動機は何だろうか?
第3の男がいたなら、彼はどういう立場だったのだろうか?

真琴「ひょっとして…キャー><」


「共和党支持の右翼の陰謀論者が、ナンシー氏を襲撃しようとして
ポール氏を殴って拘束した」という、ヒラリー氏らの語るストーリーは
実は真実と異なる可能性、が多少はあるようには見える。

そうである以上、①のようなヒラリー氏のポジショントーク?に対し
「別の可能性もわずかにある」といって②のツイートをしたマスク氏の
主張は、別に「何も問題ない普通のつぶやき」だとワイには思える。

マスク氏は②で決して断定などしていない。
「わずかな可能性がある」と言って、異説を述べているサイトのリンクを
紹介しただけ。それも「わずかな可能性」と極めて抑制的な表現で。

無論、その「異説」は「確かな真実だと確認された根拠」とは言えない。
思い込みやポジショントークによる不確実な仮説に過ぎず、

現時点で安易に鵜呑みにすべきではないヨタ話の水準である。

しかし、その点はヒラリー氏の①のツイートだって同様である訳で。



■ワイは言論統制・言論封殺的なメディアの姿勢には断固反対する

現段階で、当該事件で「何が真実だったのか?」はワイには断定できない。
まだ捜査はごく初期の段階であり、司法判断等も無論何も出ていない。
思い込みを元に安易な断定など今はすべきではないだろう。

結果的に「ヒラリー氏の言うようなストーリーがほぼ真実だった」という
ことになる可能性をワイは否定していない。


ただし、彼らによる言論統制的・言論封殺的なやり方をワイは否定する。

「真実」というのは多数決で決まるものでもないし、ましてや異端審問や
魔女狩りのような手法で決まるものでもない。

確かな根拠(証拠)と論理なくして真実には辿り着けない。

そうした論理的な説明なしに、一方的に「虚偽情報」だというレッテルを貼り、
そのリンクをツイートした者を集団で猛バッシングして削除・謝罪・撤回に
追い込んで「異論」自体を一方的に闇に葬ろうとする運動。

そうした言論統制的・言論封殺的なやり方を、ワイは支持できない。
 

真琴「それは多様な価値観、多様な意見を否定し、異論を一切認めず、不寛容で画一的な価値観を押し付ける、むしろリベラルの対極に位置する全体主義的な危険な思想ですよね」

そうしたやり方がまかり通れば、都合の悪い真実を叫ぶ者に安易に「陰謀論」
のレッテルを貼って社会的に抹殺し、マスコミが真実を闇に葬って思うがまま
に世論操作する、中世暗黒時代のような社会に逆戻りしてしまうので。


イーロン・マスク氏自身も、実はそのような主張をしている。
マスク氏は本来はリベラル派寄りで、2016年大統領選はヒラリー氏に
投票、2020年大統領選はバイデン氏に投票している。

翔子「マスク氏は本来は、米国民主党寄りの人なんですね」

しかし、ポリコレによる言論統制に反対し、今年に入ってから民主党の
不支持を表明し、発言の自由を擁護している立場である。

真琴「なんかマスク氏のスタンスはセンター長と少し似てますね」

うむ。ワイも少しだけそんな気はしている。

いずれにせよ、まだ本件で結論は出せないが、「言論統制」「表現の自由」

関連で興味深い案件なので、今後もチェックしていきたいと考える。