しかし、旅人が旅立ってから、半年。
突如として、たくさんの侍衆がこの町にやってきたのです。
「この村の一番えらいものは誰か!?」
その中でも、最も立派なお侍が、居丈高に長老を呼び出します。
「私ですが・・・。大勢で、一体このような辺鄙な村に何様でございますか?」
「我々南の国は、このたび北の国に戦を仕掛けることにした!
そのために、この村を駐屯地とすることで、北の国に、奇襲攻撃をかけることにした!!
ご協力を願いたい!」
「協力と申されても、このような小さき村。
お侍様方のお役に立てるようなことはとてもではありませんが、出来ませぬ」
平身低頭、それでもきっぱりと、長老は侍の申し出を断りました。
「なに兵糧の提供と、我々の寝所を提供されればよい!
しかし、困った。我々も、次の戦には命を掛けている。
ここで断られるとなると、強行手段にでるしかないな・・・」
そういって侍の一人が、若い娘の一人を抱き寄せ、刀を突きつける。
「ひぃぃっ!!?」
「な、なにを!?」
「我らとしても、穏便に済ませたいのだよ。頼む」
「わかりました・・・。我ら村人は、協力しましょう・・・。
ただ・・・」
「ただ?なにか?」
「白蛇様が・・・」
「白蛇様だと?」
「この山の洞窟に住む、荒神さまでございます。
とても縄張り意識の強いお方で、お侍様方も、ここに来るのに、ずいぶん苦労なさったのでは?」
「確かに、苦労はしたが、なんてことはない。
しかし、ははは!そんなかび臭い言い伝えがまだ残っているとは、お笑いものだな!
妖怪、物の怪など、この世に居るわけがない!」
「し、しかし・・・」
「よい、よい!では、我らが、その蛇とやらを何とかすれば、協力してもらえるのだな?」
「・・・はい・・・。」
「よし、貴様!その洞窟とやらに行って、蛇を退治して来い!」
一番えらい侍は、若い侍にそう、命令しました。
「だれか、案内の者を。
なに、心配はない。もし何かあった、私が主らを守ってやろう」
「は、はぁ・・・」
「で、では、かがみ、いつもお供え物を持って行ってる、お前がお侍様をご案内して差し上げるのだ」
「分かりました、長老様」
かがみと呼ばれた少女は、数人の若い侍を連れて、白蛇様が封印されている洞窟へと向かいました。