岡村隆史が50歳で結婚した。芸能界もマスコミも祝福の嵐である。マスコミは常におめでたいニュースを求めているから、仕方ない面もあるとは思うが、それにしても違和感がある。
私の違和感は、岡村が「彼女には失言問題の時にすごく支えてもらった」と述べたことによって、さらに拡大した。岡村の「失言」は失言ではない。問題発言である。その中身は言ってしまえば、風俗マニアであることを告白したものだった。
「もう少し待てば、生活が苦しくなった綺麗なお姉さんたちが、風俗の世界に入っていくる」という、実に気持ち悪い発言だった。これをなかったことにしていいのか。特に女性が、「目くじら立てることはない」と考えていたとしたら、それは大間違いだ。世界の潮流から取り残される。
岡村は愛すべき芸人でファンも多い。恐らくいいヤツなのだろう。しかし、この発言に関しては、根本的に反省してもらわなくては困る。相方の矢部はラジオで激しく批判した。だが岡村も芸能マスコミも、問題の本質に触れることは避けた。
それは、法律で禁止されている買春を、岡村が頻繁に行なっているということである。それを公共の電波で言ったのだ。世の中には、売春は古くからある商売で、法律で禁止しても意味がないと、半ば公認するような人もいる。
しかしそれを言ったら、窃盗も暴行も殺人も同じだ。それらは人類の歴史とともに古い。しかし、だからと言って認められるはずがない。それなのに売買春だけは認めるのも、おかしな話である。
岡村の発言を、気持ち悪いと思っている女性は多いだろう。今回の結婚報道も、覚めた目で見ている人も少なくないはずだ。それが表に出ないだけである。私の見たところ、ネットでも祝福しているのは男性が多い。
そもそも相手の女性は、どうやって「失言」した岡村を支えたのだろう。女性の中には、玄人が相手なら浮気や不倫よりマシと考える人もいる。男性の多くもそう考えている。それが売買春がなくならない理由の一つだ。
この問題はなかなか解決しないが、人気芸人がラジオで堂々と買春行為を告白するようなことは、もはや許されない。そんな時代ではないのだ。それでも、人気のある岡村を使って視聴率を稼ぎたいマスコミは、この結婚に飛びついた。
この結婚を祝福することによって、この難しい問題を葬ってケリをつけたいという魂胆が見え見えである。なぜならマスコミはひどい男社会であり、もともと岡村の「失言」を大したことだとは思っていないからである。
売買春の問題は男性だけでは解決できない。買春は男同士の暗黙の了解であり、「お前は一度も行ったことないのか」と言われると、そこは難しい問題だからだ。先輩や上司が連れていくこともある。買春は、いわば共犯関係になることで受け継がれてきた。
だから売買春を、少なくとも女性は認めないことが大切だ。もちろん、否応なくそういう仕事に就く女性もいて、彼女たちの人権を守る必要もある。しかし、それとこれとは別問題なのである。
長い間、男性は買春文化を維持すると同時に、この仕事をする女性を軽視してきた。こういう悪循環の連鎖を断ち切りたい。そのためにも、岡村の発言をなかったことにしてはいけないと私は思う。