緊急事態宣言が解除された。いつものようにプロンプター棒読みである。
安倍首相はコロナ禍に対して当初、社会全体の危機という認識が全くなく、厚労省に丸投げして会食を繰り返していた。事態の深刻さがわかってからも、加藤厚労相を前面に立てて早々と帰宅していた。
その後は西村経済再生担当相に丸投げしている。これは何を意味するかというと、国民生活の危機ではなく、経済の危機としてしか捉えていないということだ。国民が窮乏すれば経済は破綻する。
一時的に大枚はたいても、国民生活を守ることが結局は経済を守ることになるという、単純な理屈がわかっていない。これは驚くべきことである。緊急事態宣言が解除されても生活が苦しいことには変わりない。
個人経営の店舗などは壊滅的な打撃を受けていて、閉店が相次いでいる。失業者も増えているし、今後は製造業にも波及して大変なことになるだろう。融資を受けた商店は返済できなくて破綻する。
アベノミクス詐欺と消費増税で弱っていた日本経済は、さらに低迷するだろう。それでも財務省と一体になった安倍政権は、国民の窮状を他人事だと思っている節がある。アベノミクス詐欺の実態が明らかになるのを、何より恐れているらしい。
さらに問題なのは、コロナと生きていかなくてはならない時代の経済について、何らのビジョンをも持っていないことだ。今まで通り、グローバル化と新自由主義を金科玉条として仰ぎ、効率と人件費削減を追求し、株価を何より気にする経済運営を続ける気だ。
その限界が露呈したにもかかわらず。とにかく知的水準が低い政権なので、見当違いなのはいつものことだが、そんなことでは日本は持たない。経済の仕組み自体を根本的に考え直さなければならない。ここで弱肉強食の市場経済万能主義を是正しなければ、日本は屍累々になるだろう。
昨夜のNHKスペシャルに西村大臣が登場した。そして、今後の経済運営をどうするか聞かれ、こう答えていた。「デジタル化とリモートワークを進めます」。ダメだ、こりゃ。そんなことは当たり前だ。どういう社会を作っていくのか、この理念を聞いているのだが、答を期待する方が無理だった。
それにしても安倍首相、「日本は世界の感染症対策をリードしていかなくてはならない」と言っていたが、この「ねばならない」という物言いは実に奇妙だ。いつもこの言葉を使うが、主語も客体も曖昧である。そもそも、次の社会ビジョンさえ示せないのに、どうやって世界をリードしていくのか。
上層部が無能であることを除けば日本はいい国だが、世界をリードするなんてもう無理だ。安倍首相ではなおさらのことである。それなのにこういうことを平気で言うのは、アメリカと一体になるということの表明なのである。
アメリカとくっついていれば何とかなると思っている。そしてア、メリカ主導のワクチン開発に賭けて東京五輪を開催し、歴史に名を残す。今、安倍首相の頭にあるのはこれだけだ。だから何を言っても他人事のようで空虚なのである。一気に自粛解除を急ぐのは、アメリカの要求だという説もある。