公務員の定年延長と一体にした検察庁法案改正を、今国会では見送ることに決めた安倍首相。引き続き、この法案について「ていねいに説明していく」という。この言い方は安倍政権の決まり文句である。
安保法制も特定秘密保護法案も共謀罪も全て、「ていねいに説明する」と言いながら、ろくに説明せずに強行採決した。それもそのはず、本当にていねいに説明したら欠陥があらわになってしまうのである。
それでも強行採決に持ち込めたのは、国民の多くがこの問題をよく理解できなかったからである。その危険性を知ることができたのは、日頃から政治を注視している少数派だった。だから今回も突破できると考えていたのだろう。
しかし今回は自粛やテレワークによって、自宅にいる時間がいつもより長く、SNSで拡散した情報を多くの人が受け取った。さらに、仕事ができずに自宅にいる芸能人も参加し、そのこと自体が話題になったこともある。返事に窮する大臣たちの姿も異常だった。
しかし安倍首相は引き続き、「ていねいに説明する」と言っている。これはほとんど意味のない言葉で、何かにつけてそう言うだけだ。しかし今後、公務員の定年延長について、本当に「ていねいに説明する」かもしれない。
しかし、この「ていねいな説明」は恐らく世論誘導になるだろう。今国会での採決を断念すると決まったとたん、メディアが「定年延長はもともと野党の主張」という情報を流しはじめた。
公務員の定年延長自体は自治労や日教組など組合の要求で、それを支持基盤とする野党にとっては悲願だというのである。確かに公務員だけ定年が早いことが、天下りがはびこる一員でもある。
しかし今回は、その問題と検察庁法案改正とを敢えて一体化して通そうとしたのである。問題はそこなのだから、にわかに出はじめた「野党の悲願」論はおかしい。今後の「ていねいな説明」には要注意である。
それにしてもこのコロナ禍の中で、安倍政権は次々に悪法を通している。森大臣は「他にも多くの法案が通っている」と口を滑らせた。いま危ないのは種子法の改正だ。今後、農家が種子を、モンサントのような多国籍企業から買わなくてはならなくするための法律だ。
農家が、自分たちで取った種を使えなくなるのである。グローバル企業による種子の支配であり、日本の農業は完全に自律性を奪われる。農業は国の基盤なのに、どうしてこういうことをするのかというと、グローバル資本に対して便宜をはかり株価を上げ、政権を維持するためだ。
どうしてこんなに愛国心がないのだろう。どうして自国をそこまで踏みにじるのか。まさに「今だけ、金だけ、自分だけ」の亡国政権だ。こんなに冷酷な人間が政治権力を握っているなんて、腹も立つが悲しくもある。