【映画評】J・エドガー | もの申すブログ

【映画評】J・エドガー

とても気持ち悪い映画だった。悪い意味で。

イーストウッドの映画は「許されざる者」と「硫黄島からの手紙」を除いて、あまり好きではない。あの露悪的というか、虚無的なスタンスが何とも居心地悪いのである。北野武の映画は暴力的でも、その根底には彼なりの愛情が感じられるが、逆にイーストウッドの映画は底がとても冷たく、殺伐としている。「ミリオンダラー・ベイビー」を見よ。明るい前半が一転、後半はまるで別の映画みたいに暗いところへ落ち込んでしまった。彼はそっちが好きなのだ。

で、この作品。ジョン・エドガー・フーバーの映画を撮るのであれば、誰だってFBIにおける彼の足跡を期待するだろう。何を考え、何を行ってきたか。アメリカの近現代史における彼の役割は?

ところが、この映画。過剰なまでに主人公の異常な性癖を前面に出し、FBIの仕事は二の次だ。見ているこちらにとって、ただ、ただ、気持ち悪い映画だった。正直、彼が誰を愛そうが、どうでもいい。こっちはFBI長官の活動を見に来たのである。のぞき見の趣味など持ち合わせていない。映画はまず彼のパブリックな姿をきっちり伝えるべきで、プライベートなどおまけでよいのだ。

イーストウッドがジョン・エドガー・フーバーを嫌いなのは間違いないと思うけど、それは別に構わない。でも、それは彼の仕事を描くことで表現すべきであり、本来誰の目にも見えないはずのプライバシーで彼を貶めるのは間違いだ。イーストウッドは灯に向かって飛んでくる虫とは逆に、物事の暗い部分を見つけると、そこに飛びついてなめ回してしまう傾向があるように思う。

と言うわけで、非常に魅力的な題材を扱ったわりにはかなり残念な映画であった。合掌。