友人の話。

彼は幼年期を山中の実家で過ごしたのだが、時々不思議な体験をしたのだという。
夜寝ていると、屋敷の外より動物の鳴き声が聞こえてくることが時々あった。
ヒヒーンという馬の嘶き。天空を飛んでいるかのように、遙か高みで馬が鳴いている。

 トビコンマの鳴く夜にゃ出歩くな。お空の上へ攫われんゾ。

彼を寝かし付けていた祖母は、子守歌代わりにそう話してくれたという。
今はもう、天から馬の声が聞こえることはなくなった。
空を飛びながら嘶いていたモノが、どこへ去ったのか誰にもわからない。