皆さんは『夜さで』ご存知ですか?
多分、うちの方言なんでしょうけど、夜にニナ貝やら子サザエやらを浜辺に取りに行くんです。
夜になると、昼間深めの所に潜んでいる貝やらが、浅い所に上がってくるんです。(何でかは知りません)

そんな、『夜さで』に出かけた時の話・・・

私や弟は子供だったので、やっぱり海に入ると「泳ぎたい!」と思ってしまい、懐中電灯片手に暗い海に頭までつかり、大物を狙うわけです。

真っ暗な海中を探るというのは、スリルがありました

ここからは父の話な訳ですが

父はその時、自分の身長位の深さの所で海藻をかき分けて、大物を狙っていました。
潜りながら髪の毛のような細い海藻をかき分けているうちに、
「ガリッ」
と何かに咬まれたそうです。

「チッ、海蛇かアナゴか!?」
とその咬んだものの正体を突き止めるべく、ライトで照らすと・・・

海中に揺らめく髪の毛の真ん中に、目を見開いた『カオ』があったそうです。

それを見た父は、さっと私達を陸に上げ、とっとと家路についたのでした。

その時私達は、なぜ急に帰る命令が出たのか、と文句をたれて家に帰ったのですが・・・
父の人差し指には人間が奥歯で咬んだような咬み傷が残っていました。

「あれが、えべっさん(水死体)か、バケモンかは解らん。でも、あげなもん夜の海中で発見したら、心臓が止まるだら」

そんな父をみて、あんたの心臓が止まらなくてよかったよ、そして見たのが私じゃなくてよかったよ、と思う私でした。