知り合いの話。
彼の勤めている派出所に、ある朝変わった通報があった。
町外れの山道で、不審な車両を見つけたという。
駆け付けてみると、白い高級車が山道を外れた一段低い土地に乗り捨てられていた。
運転席のドアが開いたままだ。
辺りには通報者の他に人の姿はない。
柔らかい黒土の上には、足跡の代わりに奇妙な痕跡が残されていた。
重たい物を引き摺ったような筋が、車体の側から少し先の沼まで続いていたのだ。
取りあえず車のナンバーから、持ち主を調べることにした。
車は盗難車だった。
すぐに正規の持ち主が判明し、車両は引き取られていったそうだ。
しかし誰がその車を盗み、そこまで乗っていったのかは不明のまま。
車を降りた盗人が、その後どこへ行ったのかも皆目わからない。
それ以上の情報は得られず、そのまま捜査は終了したのだという。