ただ、その身体は非常に小さかった。
見立てでは、彼のランドセルよりも小さく思える。

「…小人?」

ポカンとして見ている内、また鶯が鳴いた。下手な方だ。
すると老人は、一つ咳払いをするような動作をしてから、大声を張り上げた。
その喉から迸ったのは間違いなく、見事な鶯の囀りだ。

ますますポカンとして、長いこと老人と鶯の鳴き合いを眺めていたそうだ。
そのうちうっかりと身を乗り出し、小枝を踏み折ってしまう。
大きな音ではなかったが、鶯は鳴くのを止めた。
気付けば老爺も、何処かへ姿を消していた。

家に帰ってから祖父にこの話をしてみた。

「この谷に昔からいるという、鶯の師匠ってヤツだろう。
 親とはぐれた小鳥に、鳴き方を教えてやってるんだとさ。
 鶯以外の鳥も面倒を見ているらしいが、やはり里じゃ鶯が一番人気だからな。
 それでいつの間にか、鶯の師匠って呼ばれるようになったって話だ。
 滅多に見られるモンじゃないぞ。
 お前、運が良かったな」

冬が明けて小鳥の声が聞こえる時期になると、彼はこの体験を思い出すという。