私の経験したちょっと奇妙な出来事です。

実家の近所に大きな廃病院跡がありました。
ずいぶん古くて頑丈そうな石造りの建物が数棟。
敷地も広くて、中には小さな池や森などもあり、プチ廃墟マニアの私などには、絶好のロケーションでした。

小学校の頃は探検や虫取り。中高生の頃には肝試し。
高校卒業後、地元を離れたので足は遠のきましたが、帰省の折りには一人立ち寄って、廃墟に独特の、眠っているような空気を楽しんだりしていました。

今年の正月にも、両親に子供を預けて、妻と二人で廃墟を散策。

妻は「濱マイクに出てきた診療所みたい」と、まんざらでもなさそうでした。
そんなこんなで、その廃病院にはもう何百回と出入りしましたが、特に怪異と呼べるような体験はこれまで一度も無かったのです。

先週末。夏休みを利用して実家に帰りました。
夕暮れ時に件の病院跡に行ってみたところ、かなり様子が変わっていました。

広大な敷地の周囲にはフェンスが張り巡らされ、中には重機が数台置いてあります。
病院の建物は跡形もなく、鬱蒼とした木立も大半が無くなっているようでした。
半ば呆然としながら周囲をうろついていると、フェンスに小さな看板が見えました。

見ると「土地区画整理事業」とあります。
この辺りは、近年住宅地として再開発が進んでおり、ここもその一環をなすようです。

それにしても、8ヶ月前まではあれだけの存在感を放っていた廃墟だったのに、人の意志が働くと、時間はこうも加速するものなのか─
そんなこと考えながら、蝉時雨の絶えた道筋をたどり家へと戻りました。