男は一見して高校生のような顔をしているが、その雰囲気は老成していた。
声は低い美声で、正直なところ年齢不詳だった。

男「どうしました?」

友人「…車がエンストしたんです」

男はいきなりボンネットを開け、暫らくそこを眺めている。
そして、唐突にエンジンが掛かった。

男「もう大丈夫ですよ」

修理してくれたのかと思ったが、男の指には油ひとつ付いていなかった。
友人が「良かったら乗って行きますか?」と聞いた。

男「私はここに仕事があるので」

そう言って来た道を引き返して行った。
背筋がピンと伸びた軍人のような歩調だった。
あの人は山の神様に仕える人だったのかもしれない。