伝聞

大学生の頃、先輩方が旅行で群馬に行った。
特に目的もなく、ゆっくりするつもりだったので山奥の旅館に宿泊したそうだ。

夕方、食事までの時間をつぶす為に近くの林道を散歩した。
暗くなってきたのでそろそろ帰ろうと話していると、
前から小さい女の子を背負ったおばあちゃんが歩いてきた。

おばあちゃんは一礼し、妙な質問をしてきた。
 「すみません、大阪へはどちらに行けば良いのでしょうか?」
痴呆とも考えられたのだが、邪険にするのもためらわれたので最寄の駅を教えて電車に乗ることをすすめ、国道のバス停まで案内して別れた。

おばあちゃんは何度も礼を言っていた。

旅館に帰ってから、この話を仲居さんにしたところ

 「ああ、御巣鷹のほうから来たんだろうね」
と言われた。
1985年に御巣鷹山に墜落した日航123便は、東京発の大阪行きだった。

良いことをしたはずの先輩達は、何故だか無性に怖くなったそうだ。