Sは曖昧に酒を飲むと己を見て笑った。
「…おっちゃんに話をしたから、耐性が出来てたんじゃないかと。」
「……どういうことでい?」
「ガス、浴びちまう時、一瞬、子供の声がしたんだよ。小さい、女の子の笑い声。
反射的にそっちを振り返ろうとしたんだけど、おっちゃんと話、したの思い出して振り返るの堪えたんだわ。」
Sは自分の左後ろに手を翳すと
「そしたら、そっちから、ぶわっ、ってな具合にガスが。」
「……振り返ってたら、直撃?」
「うん。多分。いやあ、洒落にならん感じだった。脂汗でまくりだったし。」
このSの感想を聞いた時、不謹慎にも思わず、失明しかけた、とのSのメールを見て、ほっとした訳が解ったような気がした。
その時出した、返信通りの心持ちだったのだ。
「死ななくて良かったな」と。