きっと呆けてしまって、奥さんがついて来ている事にも気がつかないのだ。

何となく可哀想に思えて、何気なく振り返ってみると、
そこには、お婆さんしかいませんでした。

お爺さんも、自転車も、どう目を凝らしても見えないのです。
その路地は、大きな工場の裏手で、どこにも隠れるところはありません。
雨の夜とは言え、シルバーの自転車と、ネルっぽいパジャマだけを着たお爺さんを、見失うわけもありません。

お婆さんは、傘を何も無い空間に差しかけて、自分は肩を濡らしたまま、ゆっくりと歩いていきます。
その姿が、路地の角を曲がって見えなくなるまで、私は怖くて動けませんでした。

後から思い出すとおかしな話です。
まだ、消えたのがお婆さんだったら、普通の幽霊話で済んだのに(°□°;)。