さて、竿を出して釣行を開始する。大雨の後に釣り人が入った形跡は全くない。

この川では珍しいライズ(魚の飛びはね)も確認できる。いつもなら小躍りするような
好条件なのだが、この日はどうもおかしかった。

何でもないような所で根掛かりをしたり、木の枝に引っ掛けたり、木の根に躓いたり、石の上で滑ったり・・・その時は大雨の影響だろうと考えていたのだが、今考えるとまるで「奥へ進むな」と言う警告だったような気がする。

右膝と臀部に打撲を負った。しかし、魚だけは良く釣れていた。
こうなると釣り人の性か、前へ進まずにはいられない。

「もう少し、もう少しだけ・・・二段淵まで行こう・・・」

「二段淵」とは巨大な岩盤に囲まれた絶好のポイントである。
ここに着くまでに右肘と右手の甲に擦り傷が増えていたが
なんとか「二段淵」に到着し、ほっと一息ついた。

水量が少し多い他はいつもと変わらない景色・・・のはずが・・・

「何かおかしい・・・」

淵全体の雰囲気がいつもと違った。

いつもなら下流に向かって気持ちよく風が吹いているのだが、この日は無風。
ライズも影を潜め、川から生命感が無くなっていた。
さらに、不気味なほどの静寂・・・そう、鳥の鳴き声一つ聞こえないのだ。