2年前の話

俺は渓流釣りが趣味で、ウチの近くの川の源流部へよく釣りに行っていた。

車で30分程度の距離、適度な水量、あまり険しくない流れなど1人で行ってもさほど危険を感じないような場所である。

3月には珍しいくらいの大雨が降った翌々日、俺はその渓流へ入った。

車を降りてから最初のポイントまで行く間に、砂防ダムを一つ越える必要がある。
歩きながらふと砂防ダムの上を見ると、大きな鹿がいた。
いつもなら人影を見ると逃げるのだが、この日は全く動こうとしなかった。

砂防ダムの下まで来ると、そこには足でも滑らせたのだろうか、すでに冷たくなっている子鹿の姿があった。

すると、砂防ダムの上の鹿はこの子の親か。親鹿は悲しげな表情をしたまま森の中へ消えていった。

俺は子鹿のために小さく合掌をしてからその場を後にした。
いきなり自然の現実を目の当たりにしたためか、それとも曇天のせいかこの日は足取りが妙に重かった気がする。