友人の話。

渓流で一人釣りをしていると、背後から声を掛けられた。
「何しとるのかね?」
鮎を釣ってるんだ、そう答えながら振り向くと、そこには異様なモノがいた。

身体は赤犬だったが、首から上の顔は老爺のものだった。
毛並みは綺麗にしてあり、きちんとお座りをしている。

驚いてポカンとしていると、人面犬は再び口を開いた。
「鮎か。久しく食っておらんの」

その言葉を聞いて、何故か恐怖より先に親近感が生まれたという。
釣り上げた鮎を人面犬の前に置いてやり、良ければどうぞと勧めてみた。

「や、これはすまんの。ありがとう」
犬は感謝すること頻りで、大人しく鮎を喰らい始めた。
器用に前足で押さえながら、中々に上品な食べ振りだったという。
生で良いのかと問うたところ、生が良いのだと答える。

「薄味が好みでの。人の味付けはちと合わん」
そう言ってカラカラと笑った。