同僚の話。

彼はメンテの仕事で、山奥の火葬場によく出向くのだという。
いつの間にか掃除係の小母さんと顔馴染みになった。
この小母さんはそこで働いて長いらしく、何かの時は一番頼りになるのだそうだ。

ある時、焼き場裏の機械室に入ろうとしたところ、小母さんが小声で呼び止めた。
「今は止めた方がいいよ。中で沢山騒いでるから」
真顔でそう忠告してきた。

ハタと思い当たる。

そういえばこの機械室にいると、何度か不気味な思いをした。
例えば、誰かに服の端を引っ張られて振り向いたのだが、そこには誰もいないとか… 。
例えば、自分一人しかいない筈なのに、誰かに脇腹を突かれるとか… 。
そんなことが多々あった。

彼はかなり鈍感らしいが、そのような体験は出来れば避けたい。
素直に忠告を受け入れたのだという。

以来その室に入る前には、必ず小母さんに見てもらってからにしているそうだ。
彼は秘かにその小母さんのことを“主様”と呼んでいる。