近所のおじいさんが山へ杉の葉拾いに行った(杉の葉は薪になる)
拾った杉の葉を縄でくくっていると、若い女が一人、山から降りてきた。

毒消し売りの格好をしていた。
(毒消し売りとは『薬売り』のことで、『毒』とは『腹痛』のこと。つまり漢方みたいなものを売っている人。…らしい)

しかし、いくら毒消し売りといっても格好が古臭い。まるで江戸時代のような格好だ。
なんだろうこの女、と思いつつおじいさんは作業していた。
そして、ふと気が付くと、女は遥か向こうを歩いていた。

おかしい。自分の近くを通り過ぎたはずなのに全く気づかなかった。
それにほんの少し目を離した隙にあんなに遠くに行けるわけがない。
おじいさんは気味の悪さを感じ、杉の葉を担いで山をおりた。
すると、帰り道になんとあの女がいたのだ。
石に腰掛けてあたりを見回している。その動きもなんだかおかしい。
動物がサッサッと素早く首を動かしているような、そんな不自然な動き。

(あぁ、多分こいつは人間じゃないな)

おじいさんは直感的にそう思った
小走りでその女の前を通り過ぎ、しばらく行ったところで女を待ち伏せた。
本当に毒消し売りなら、人が住んでいる場所に来るはずだ。
しかし、いつまで待っても女はやって来なかった。

他にも、『川に魚がいっぱいいる!』と言って川でばしゃばしゃやってるおじいさんがいたり(実際は川には何もいなかった)、
木に抱きついて眠っているおっさんがいたり(女だと思って抱きついていたらしい)、とにかく不思議なことが何度かあった。
ちなみにこの人たちは決して酔っ払ってたわけではない。

数年後、熊を捕獲するための罠にバカでかい狸がかかった。本当に熊と間違えるほど巨大で、体毛はほとんど真っ白の古狸。
その狸がいなくなってから、不思議な出来事はあまり起こらなくなったという。