友人の話。
山で子供が行方不明になった。
消防団員である彼も捜索に加わったのだという。
「アギトに近づいてなけりゃいいが」同行した年配者がこう呟いた。
アギトとは何かと聞くと、この山のある谷地がそう呼ばれているのだと言われた。
そこに入り込むと帰ってこられなくなる、いわゆる神隠しの谷なのだと。
「それも入り込んだ者の生死を問わずにな。
昔は厄介者が死ぬとアギトに投げ棄てていたらしい。
一日も経てば、綺麗さっぱり痕も残さず失くなるってよ」
場所を聞いて驚いた。里から割と近いところにある。
そう言えば、あの辺じゃ小鳥の姿を見ないって、野鳥の会にいる友人が言ってたな。
そんなことも思い出した。
幸いその日の午後、子供は無事に保護されたそうだ。