知り合いの話。

彼の生まれ故郷の山村では、雪が降るとカマクラが沢山作られていたという。
だだっ広い境内が奥神社にあったので、そこで村の衆が思い思いにカマクラを拵えて、中で夜遅くまで酒を飲みながら騒いでいたらしい。

一つだけ、決まり事があった。
日が落ちてからは、新しくカマクラを作ってはならないというのだ。
持ち回りで見回りの役がいて、日没前に数を確認していた。
作った覚えのないカマクラが隅に見つかると、役総出で壊して回った。

“暗くなって作られたカマクラは、山から下りてきた鬼が作ったモノだから”

そう伝えられていたという。
鬼は中を暖めて、旨そうな酒と食べ物を仕込んでおく。
うっかりその中に入り込んで良い気分になってしまうと、鬼はカマクラごと中の人を山へ持ち帰ってしまうのだと。

今はカマクラが作られることもなくなり、夜遅くまで外で騒ぐ衆もいなくなった。
余所の地でカマクラを見ると、彼は怖いような、そして懐かしいような、そんな気持ちになるのだという。