知り合いの話。
山の手入れをしていた時のこと。
下草を一通り刈った頃合で腰を下ろし、休憩して一服つけることにした。
のんびりと紫煙を燻らせていると、頭上の梢から細長いモノがスルスルと降りてきた。
着物や浴衣に使う帯だった。
どう見ても布製のそれは、まるで蛇のように鎌首をもたげ、彼の周囲を探り始めた。
匂いを嗅いでいるようなフンフンという息音が聞こえてくる。
煙草の煙が掛かった途端、帯はその動きを止めた。
ヘクシッ!
帯はクシャミみたいな声を出して猛然と首を振り、あっという間に梢の間に戻って消えた。
最初から最後まで、彼は煙草を咥えたまま身動き一つ出来なかったという。