知り合いの話。

彼の祖父はかつて猟師をしていたという。
遊びに行った折に、色々と興味深い話を聞かせてくれた。

「山に入っとった仲間が、青い顔して早々に帰ってきた日があった。
 そいつが利用してる狩り場へ行こうとしたら、仰山の骸が落ちとったちゅうての。
 ほとんどが雉だったそうじゃが、どうしたことかと寄って調べてみたところ——」

「倒れとるどの鳥にも、目玉が無かったんだと」

「“こりゃ十二様(山の神)が大荒れしてらっしゃる!”って思ったんだと。
 恐ろしくなって一目散に逃げ帰ったそうじゃ。
 本当かってんで、何人かで連れ立って、そこンとこの山道に行ってみた。
 もう何も落ちてはいなんだが、えらく腐臭がしておった。
 嫌な前触れだのう、そんなこと話しながら直ぐに山ァ下りたわ」


「その秋は、本ッ当に何も獲物が獲れんかった。
 まぁ皆予想はしとったんで、出稼ぎ入れたり内職入れたりしとったけどよ。
 十二様が怒っちまうと、鉄砲撃ちは何も出来ねえナって実感したわい」