学生の頃 都内の某ビジネスホテルで警備のアルバイトをしていた。

従業員が仮眠をとる深夜十二時から朝の五時まで、簡単なフロント業務と見回り。
門限過ぎに戻ってくる泊り客に、通用口を開ける仕事などなど。

 ある日、台風接近で激しい豪雨になった。
こんな夜は宿泊客も外出を控えるもので、業務を引き継ぐ際に、朝までゆっくりしてられそうな気がした。
 僕はカウンター前のソファーに体を沈め、うつらうつらしながら、巡回時間まで休んでいた。飛び込みの客もないだろうし、外出中の客もいなかった。

 激しい雨音に耳がなれた頃、はっとして目がさめた。
少し眠ってしまったらしい。表玄関の方を見ると、………、おやっ、人がいる。

というか、人が座りこんでいるらしい。

 ちょっとただならぬ感じがして、僕は玄関のカギを取りにフロントに戻った。
いつもならその横にある通用口に案内するのだが、時々正体を無くすほどの酔客もいるのだ。
 カギを持って振り返ると、玄関に人影はなかった。